土星蜥蜴の「筆のすさび」

日々雑感。 アニメ文化に関する気ままな評論・感想を書き連ねます。

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『立喰師列伝』の感想。

「立喰師とは何か。それは、体制の周辺部を漂う遊民たちによる、戦後なるものへ向けた、固有の意識と方法によるアプローチであった。」
『立喰師列伝』より

以下、ネタバレが多分に含まれますので、ご了承の上でお進みください。


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 さぁて、どこまで本気なんだろうwずいぶんギャグテイストで仕上げているけど、かなりホンネが語られているんだろうなぁ。監督自身のコメントでもそんな内容が見受けられるから、特に前半部分の万博前くらいまでは押井さんの思想がもろに反映されたものだったと思う。いわゆる「戦後的なるもの」への反発とかゴト師を通して語られる反社会とか、いろいろ問題になりそうな点はあった。その語り口も独特の表現だったし、架空の民俗学者という設定には少なからず無理があったようにも思う。だって、言ってる内容は民俗学というより社会学なんだもんwそれに、学問的に「確信的な推論」っていうのは成り立たないし、それすらも虚構と捉えるならば、押井さんの思想がむき出しのギャグにも虚構にもならない「押井主観による時代の記録」だった。あ、ちなみにアニメっていうよりペーパーな人形劇って感じです。ずっと山ちゃんの語りだしwあんな難しいセリフを90分もしゃべらされて、お給料はどうだったんだろうか…ww

■アニメとしての『立喰師列伝』

 いや、アニメじゃないよwwwここまで剥き出しな作品って、実写でもありえないんじゃない?押井さんが好き勝手にやった感じ。作品としてやるなら、もう少し物語なんかでオブラートに包みながら出来事や人物の実像に沿って語られるべきところ。簡単に言えば、この作品って物語文や小説の類ではなくって、エッセイとか隨筆みないなジャンルになるんだと思う。論説文にはなりきれていない。いわゆる説明的隨筆文ってやつなのかな?wさすが押井さんだけあって映像表現では飽きさせるところはないけど、内容としては主観がもろに展開されていてアニメらしくはなかった。ずいぶんな冒険というか好き勝手な作品っていう感じ。しかも、気合が入っているのは前半部だけで、後半部はちゃらんぽらんに遊んじゃった感じw動きも多少は出てきてギャグな度合いは高まって楽しいんだろうけど、中身はない上にギャグなら他をやればいいんだから、どうしようもないよねww

■遊民というアウトサイダー

「月見の銀二がドンブリの中の景色として予見して見せた再出発の幻影は、ケツネコロッケのお銀が抱いた風景の中で挫折を約され、破綻を以て自己証明に代える犬丸の自虐的ゴトを経て、冷やしタヌキの政の自己処刑劇として早くも完結を見ることになった。立喰師たちが背負った戦後という十字架、平和と民主主義の理念が終焉を迎えて後、彼らの系譜はさらに屈折の過程をたどるのである。」

「立喰師とは何か。それは、体制の周辺部を漂う遊民たちによる、戦後なるものへ向けた、固有の意識と方法によるアプローチであった。ある者は、戦後の荒廃に伝統的情緒たる景色の復興を啓蒙し、また、ある者は、挫折の風景を予感し、破綻を以て自己実現となし、そして、総括としての自己否定を演じて見せた。時降り、ファーストフードとの闘争を経て、ついには、自らを都市伝説へと昇華していった一群の者たち。人々は彼らを、食文化に炎でその名を刻んだ異端の英雄と称え、あるいは、秩序の破壊者として指弾し、甚だしきは、そのすべてを虚構として否もうとする。」

 まず基本的な視点として「何を」食べるかではなくって「いかに」食べるかという部分に焦点を当てた考えなんだっていうことを理解しておく必要があると思います。彼らゴト師が相手にする「食」は混ぜ物だったりする、いわゆるファーストフードです。そこには「何を」食べるのかという美食の観点はなく、「いかに」食べるかという精神性が関わってきます。あるいは「なぜ」食べるのか。決して栄養価がバランス良く考えられた食品というわけでもなく、さして美味しいわけでもない。メリットは安価で即席ということです。こういったファーストフードが台頭してくる背景にはどんな社会状況があるのか、どんな思想性が隠れているのか、そんな視点をもってゴト師を通して押井さんの見方が語られる感じです。
 彼らゴト師のことを「遊民」と呼んでいるように、彼らは社会からすればアウトサイダーに位置する存在になります。先の引用の通り、彼らは「体制の周辺部を漂う遊民」であって、「戦後なるもの」へとアプローチする存在だそうです。特に犬の駆除を引き合いに出して、彼らと犬とを重ねて考えるところは解り易かった。要はオリンピックの開催にあたって防疫を理由に野犬の駆除を行ったそうで、つまりそれは社会に容認されない存在は排除されることになった象徴です。「お国のために」や「欲しがりません勝つまでは」といった戦中の思想を厳しく内省する中、結局はオリンピックというお題を前にして大同団結的な風潮を展開するわけです。そのために、大同団結しない存在、つまりは路傍で歩き食いをする人々や露天で物を食べる人々や疫病を広める媒介になる可能性のある野犬などは排除される対象になったというのでしょう。そして、ゴト師はそんな風潮を反映した存在であって、彼らの言動を知ることによってそんな社会のアウトサイドを垣間見ることができる、、みたいなことを言います。
 まぁ、敢えてゴト師っていう存在を使う必要も感じなかったけど、とにかく、生身の押井監督の歴史観が提示された感じ。そして、とどのつまりは社会批判なんでしょうね。だって、「異端」であって「秩序の破壊者」である彼らを真面目に受け止めていて、押井さん自身は彼らを排除してないんだもん。戦後の歴史観の「ひとつ」として見るところはあったと思います。

■文体について

 脚本に相当な苦労というか労力を要する作品だったんじゃないのかな?あんなに山ちゃんにしゃべらせているんだから、台本には日頃のアニメでは見かけない漢字ばっかりで、さぞかし黒っぽく見えたことだろう…w ただし、あんな文体で語られると意味わかんないよね。文語調で普段は決して使わない漢語を多用しているから、どうにも理解に苦労するというか、部分的には意味を理解できない言葉が多かった。せめて和語を使うなりして、もう少し口語っぽくしてほしかった。これすらもギャグテイストと想定して用意された文体なんだろうか。でも、伝わらない時点でデメリットが多すぎるよね。。



 河森さんってインドっぽい風貌なんだ…wバリ島とか海外を遍歴したってことが語られているけど、それは実際の話なのかな?もしや、それがマクロスゼロとかに関わってきているんじゃないだろうか。。意外にもアニメ制作スタッフの人柄がにじみ出るような内容になっているので、そういった視点で楽しむこともできました。神山さんの絶叫した顔っていうのも面白かったしw

テーマ:見たアニメの感想 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2009/11/03(火) 01:51:25|
  2. 立喰師列伝
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