土星蜥蜴の「筆のすさび」

日々雑感。 アニメ文化に関する気ままな評論・感想を書き連ねます。

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『ストレンヂア-無皇刃譚-』の感想。

「あんたにできるのか?偉そうなこと言うが、あんた、あの子を助けに行けるのか?行けまい…。死にに行くようなもんじゃから、行けまいがぁ!あんたも、あんたも所詮、私と同じよぉ!!」
『ストレンヂア-無皇刃譚-』より

以下、ネタバレが多分に含まれますので、ご了承の上でお進みください。


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 面白かったけど、割と緻密でこだわりの見られる舞台設定に見合わず、キャラやセリフが軽すぎてアンバランスだった。もうちょっとなんとかならなかったのかなぁ。妙に細かい部分で気遣いの見られる表現を演出しようと頑張ってる反面、登場人物の心理描写やセリフがいかにも俗っぽいアニメのままで気持ち悪かった。世界観とキャラクター性があまりにも乖離していて、なかなか微妙な感じだったなぁ。時代劇やるなら時代劇らしさを、アニメをやるならアニメらしさを、どっちか選ぶべきだったような。。結局はどっちつかずになっていて、惜しい感じがして仕方のない作品でした。それに、宣伝では時代劇とか言ってるけど、その時代の習俗とか雰囲気が描かれるわけではなく、ただ侍の出てくる世界を舞台したフィクションって感じ。時代劇という舞台をガジェットとしてアニメに取り込んだって言ってもいいのかな?作画に関してもCG使ってキレイに見せてはいるけど、機械の技術を駆使していながら原画の技術はそれほどって感じ。ただし、戦闘シーンなんかに限っては松本憲生さんらしい動きに重みを見せるいい絵でした。しかしながら、生々しい描写をすればリアルに見えるって考えているような手合いは好きじゃない。う~ん、微妙だw

■「名無し」というキャラクターの解題

 こんなキャラクターって、どこかで見たことがあるような…。高い能力を有していながら流浪している、自らの能力を行使することに躊躇う、他人の面倒を見ることが嫌なフリをしながら結局は手助けする、狡猾さや周到さを持たない子どものような純粋さに惹かれる、自身の過去の行為にトラウマを抱えている、そして手助けというのも贖罪の意味合いを帯びていることがある。こんな感じでしょうか?おろ!?緋村抜刀斎ではないかっ!!wまぁ手助けに積極的でないところは似ていないかもしれないけど、過去のトラウマを解消するために人助けを行うっていう核心の部分は一致しているような…。 
 つまるところ、名無しは過去に犯した斬首に意義を感じられず罪悪感を持つわけです。かつては命令されるがままに斬首を行ってしまったけど、実は自分の素直な気持ちとしては助けたかった。そこで自身の考えを通して「突っ張って生きていく」ことにしたようです。名無しっていう名前も、そんな誰も主人が存在しないからこそのネーミングなんでしょうか。この名前の意味合いはあんまり物語の中で効果的に取り上げられなかったけどwまぁ、そんな過去の清算するためにも、仔太郎を助けたと考えていいでしょう。かつて助けられずに斬首した相手と仔太郎とを重ねて考えて、仔太郎を助けることが名無しにとっての贖罪の道になり得たということです。
 さらには仔太郎の「甘さ」や「純粋さ」にも惹かれていた。仔太郎は「悪知恵」が働くとして描かれるけど、なんだかんだ言って子どもらしい抜けたところがある。そんな「隙」のある子どもっていうのが名無しに警戒心を持たせることなく同伴させることにもなったのかな。
 基本的には名無しが主人公だったんだろうけど、あまり大きく物語の中で作用をもたらすような存在ではなかった。結局は戦闘シーンが中心になってしまって、心理描写だの人物関係だのは二番目三番目って感じ。むしろ、脇役とか細々した設定とか、物語の世界観を作る空気のような存在である背景にこそ気遣いが見られただけに、名無しと仔太郎は物語を進めるための媒介でしかなかったように思う。狂言回しとまでは言わないけれど、もはや作品のテーマとして「名無し」を考えることは無理。

■世界観を作り上げる細やかな気遣い

 うん、この作品の素晴らしいところは戦闘シーンの作画と細やかな設定への気遣いでしょ。でも、戦闘シーンは松本憲生さんの他の作品を見ればよっぽどいい作画もあるんだから、この作品を特徴付けるようなものは世界観を作り上げるために織り込まれた細やかな描写じゃないのかな?
 たとえば、仔太郎が生乾きの薪を使って火を熾す場面、名無しと羅狼の初戦闘を取り囲むベーゴマや釣りといった日常風景、糸を切って逃げた魚がウキを水中に引き入れる場面、明国の土巳を捕らえて拷問するという狡猾な策略、百姓に発布した高札の字体と文体、白鸞の持っていた漢籍の文面、血で染まった目を雪で洗う仕草、鍔迫り合いしているときに白刃にかかる吐息で曇る様子、馬術や馬具への考證、いろいろと気遣いの見られる場面が多かった。生乾きの薪を燃やすことは煙を出すことになるから、仔太郎たちの存在を追っ手に察知させる展開を導くきっかけになったし、そういったことに気の回らない稚拙な仔太郎の「らしさ」を表現するのにも効果的だった。名無しと羅狼の初戦闘を囲む日常風景は戦闘の緊張感や異様さを引き立てるのに十分な演出効果を与えていたし、魚がウキを水中に引き入れるのだって趣を感じさせるものだった。特に白刃にかかる吐息で曇る刀とか、目を雪で洗う仕草なんてのは素晴らしかったねぇ☆
 こんな細やかな演出が安定した世界観を提供する土台になったと思う。時代劇らしい演出なのかもしれないけど、一方ではキャラクターがセリフをしゃべると急にアニメっぽくなってしまって違和感ありまくりだったwやっぱり、アニメはアニメらしく作るのがいいのかもねww第一、キャラクターのセリフが多すぎる。。解り易さを重視すれば何もかも語るっていうのがいいんだろうけど、あまりにも口数が多くって繊細な演出を台無しにしていた感も否めない。声優の某事務所との関係でセリフを多くするようにって要望があったのかな?wあんまりにも名無しと仔太郎のやり取りがバカバカしいんだよねwキャラクターと世界観の乖離が甚だしかった。

■世界観を構築する時代考証的要素と知識

 もうひとつ、よく考えていると感じさせるのは考證の部分。馬術や馬具の考證はまぁ良かったのかな?それに、高札の文字面も崩し字でしっかりと書かれていて読める!wでも、見よう見真似なのかセンスのない崩し方で下手くそだったけどねw白鸞の手元にあった漢籍もそれっぽかったけど、中身は創作だったのかな?どうも五行思想のもとに書かれたもののように思えるけど、どこか違和感もある。他にも、白鸞が主人を殺す虎杖将藍を見て「もののふの世か…」って言うけど、これは愚管抄のことを暗示させるものだし、虎杖将藍の「己の身の丈に合わせて望みを決めるなど真っ平よ。わしゃぁのう、望みの大きさに合わせて身の丈を決めてやる!」とか「俺に付くか、死んだ殿に付くか!」っていうセリフも下克上のことを言っているんだなぁと思わせるものだった。
 どれも少しは勉強したんだなぁと思わせる部分だけど、結局は付け焼刃な知識でしかなかったのかなwボロがあちこちに…。。高札の文字が見よう見真似だっていうのもそうだし、五行思想についても怪しい。。明国の人物の名前が土巳とか金亥とか五行を背景に感じさせるネーミングもあったけど、月申とか風午とか五行思想には見られないネーミングもあった。。きっと、木火土金水の五つじゃ足りなかったんですねwそれに、白鸞の「もののふの世」っていうセリフと虎杖将藍の下克上を示すセリフは明らかに時代錯誤だと思う。だって、鎌倉初期の発想と戦国時代の発想だよ?同一次元で扱うには問題のある考證だと思う。
 結局、頑張って考證やっている姿勢は見られるけれども、浅知恵のために矛盾やボロが見えてしまったwしっかり考證役を付ければよかったのに、、とも思うけど、逆にこういった発想を誰が考えていたのかっていうのも不思議なところ。アニメにしてはずいぶん知識を感じさせる考證なだけに、誰の入れ知恵なのか気になるところ。

■作画のいいとこ・わるいとこ

 さて、そろそろ批判めいたことを指摘していきましょうかww作画は全体を通してキレイに仕上がってはいるんだけど、やけに血飛沫とかゲロとか過剰に表現していて微妙だった。リアリティを追求するならやり過ぎだし、かえって過剰表現のために鮮烈な印象を与えるだけの効果しか持たなかったと思う。だって、あんな弓矢にあんな貫通力あるわけないじゃんwどこかのアカシシに跨る少年のようにタタリを受けて神がかり的に力が増強されているならまだしも、雑兵であっても同様の力を持っているんだから意味がわからないwwそれとも、ゲームの難易度を高に設定したために敵の攻撃力が全体的にアップしたんだろうか…。。とにかく、無意味に血を出すところが好きになれない。
 カメラワークなんかはスゲー動きも取り入れていたし、戦闘シーンの動きが早すぎて並みの地球人では目で追うことが出来ないほど動いていた。だけど、馬の動きなんかは『もののけ姫』のほうがよっぽどリアルに描かれていたし、どんなに技術が進んでも原画の力には勝てないんだろうなぁっていうのを如実に感じさせることになった。最初の場面で牛が転落する場面はやっぱり『もののけ姫』を意識したんだろうか。。そう思わせるような落ち方だったなw結局は細かい描写は人の手で描かれる力に頼ることになるんだろうねぇ。その点、戦闘シーンでの体重移動のリアルさとか慣性の力に流される物体とか、ナルトや忍空やアルジュナや灰羽連盟なんかで見られた松本憲生さんの作画を思い起こさせるような場面が多かった。仔太郎が泥水に滑って転びそうになるんだけど、なんとか踏みとどまって前に走るっていう描写はなかなかリアリティもあって良かった。
 変に殺傷能力を高めて鮮烈な戦闘を過度に演出する方法が取られて滅入る部分もあるけど、戦闘シーンの動きは良かったかな。羅狼と名無しの初戦闘シーンなんてのは「少し、遊びたくなった…。」だなんて不自然な流れを作ってまで描いていたから、よっぽど戦闘シーンで押していきたかったんだろうか。そう考えると、最初に羅狼と賊の戦闘シーンがこの作品における作画の象徴的な場面でもあって、あれが作品のすべてと言ってもいいことになってしまうかもしれないw作画で気合の入っていたのは、やっぱり最初と最後だしね。。中身はさっきも言ったようにキャラクターがボロボロなだけに、この作品の良さっていうのは最初の戦闘シーンっていうふうに言われ兼ねないんじゃないのかな。。

■ベタベタなセリフとキャラクター設定

 印象に残るようなセリフがなかったんだよね。。名無しが「まったく、大した雇い主だ…。」って繰り返すけど、あまりに仔太郎のキャラクターが微妙なために地に足の着いていないセリフとしか思えなかった。それに、祥庵が名無しを問い詰めるセリフも確かにいいんだけど、もう少し名無しの過去について深くえぐらないと効果が発揮されないようなもので生かしきれていなかった。一番の悪役である羅狼だって単に戦闘を好むっていうだけで何ら心理描写はなかったし、「単なる悪役」でしかなかったのも残念なところ。第一、ジュブナイルとしての仔太郎という存在は考えられないわけで、主人公の名無しでさえ重要な過去話を粗末に扱われてしまってキャラクターへの期待は持てなかった。むしろ、名無しと仔太郎に宿を提供していた爺ちゃんがベストキャラクターなんだろうかw
 名無しと仔太郎が打ち解けるようになった経過だって省略気味だし、アクションを派手に大きく取り上げるために脚本を割愛した感じが強いなぁ。仔太郎だって成長することなく、彼の言動が名無しに影響を与えたとも思えなかった。仔太郎は名無しにとって過去のトラウマを解消するための道具立てでしかなくって、それは仔太郎でなくても良かったような感じ。キャラクターの意味があまり見出せなかった。仔太郎には人としての深みが見られなかったしね。

■この作品の落ち着くところ

 世界観の設定とか演出としてはアニメの領分を越えているし、かと言って上手い具合にアニメの中に取り込んだわけでもなかった。アニメの得意とするキャラクターの内面描写だって疎かになっている現状からすれば、単なるアクションものとしか思えないw時代劇でもなし、アニメでもなし、単なる作画の展覧会を見るようなもの。
 そして、最悪のオチっていうのもすごかったw変にハッピーエンド感を出そうと頑張ったのか、名無しが死ぬことが目に見えているのに、希望へ向かって仔太郎が走り出すみたいな展開になっていた。他にもオチの描き方はあったと思うんだけど、ちょっと優等生を気取ったんだろうか。あれだったらクレヨンしんちゃんの戦国大合戦のオチのほうがよっぽど見事だったと思う。仔太郎に何ら悲壮感もなく決意もなく、ただ無闇に希望へと向かっているような姿は中身のないキャラクターを暴露しているようにしか思えなかったw



 ボンズっていうだけに期待していたんだけど、ちょっと外れちゃったかなぁ。エウレカやらザムドやら黒の契約者やら、安定した脚本や世界観を背景に作画も仕上がりのいいものを出せる作品が多かっただけに、今回のキャラクターとセリフっていうのはかなりショックだった。結局はアクションかよ!っていう突っ込みを入れたくなる作品っていうのもボンズっぽくなかった。ボンズの強みは他にあると思うんだけど…。好意的に考えれば劇場版ということで何か横槍が入ったとか制約があったとか外部要因を想定することは可能だろうけど、ただただ作品として評価する場合にはどうしてもマイナスイメージが先行してしまう。最後に一言、仔太郎の演技がド下手でヒドかったですww

テーマ:見たアニメの感想 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2009/11/09(月) 19:07:58|
  2. ストレンヂア-無皇刃譚-
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