土星蜥蜴の「筆のすさび」

日々雑感。 アニメ文化に関する気ままな評論・感想を書き連ねます。

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『学園戦記ムリョウ』全26話の感想。

「えー、宇宙人は、実は、いました。」
『学園戦記ムリョウ』#01「戦記、はじまる」より

以下、ネタバレが多分に含まれますので、ご了承の上でお進みください。


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 佐藤竜雄監督の作品を見ていると、特に『機動戦艦ナデシコ』と『学園戦記ムリョウ』と『宇宙のステルヴィア』では「一致団結」とか「熱血」とか「みんなで」っていうのが好きなんだなぁと思う。確かに先導者としての大人を物語に配しながら子どもや未成熟な人物が成長し、最終的には何かひとつのことを子ども全員の力で成し遂げるっていう筋立ては見ている側も達成感があってジュブナイルとしても成功していると思う。ステルヴィアではそれが顕著だった。だけど、今の世情には合わないんだろうなぁ。。ムリョウも良作であるとは思うんだけど、じゃぁ、今年の放送枠で最新アニメとして放映している様子を創造できるかと言えば無理なわけで…。そもそもガンダムやマクロスのように個人の「勝手」が登場人物それぞれに描かれていた時代からすれば、今のアニメは主人公こそ第一であって登場人物それぞれの我侭や勝手は描かれない。どうも主人公に都合のいい設定や展開が行われる。あるいは規定のキャラクターによる予定調和的な展開とでも言うべきか。というか、個人が「空気」なる集合無意識的なもののもとに帰属している今となっては、個々人の独自性なんてものはいわゆる「KY」でしかない。そんな中で、ムリョウはガンダムやマクロスなどの前者に類されるんだろうから時代にはそぐわないように思う。監督がこれら三作品に続くものを作らないっていうのも、時代の流れが関係しているんだろうか…。

■ムリョウで描かれる宇宙

 とにかくスケールがでかいww一万年前だとかそんな時代から生きている宇宙人もいれば、超能力じみた力を使う天網の民もいて、たくさんの星々から宇宙人が地球に来訪していて、銀河連邦とか宇宙連盟とかっていうのまで存在する。っていうか、人間が生身で宇宙を飛行している姿を描いたのって始めてなんじゃない?そんな突飛な設定はSF的にも裏付けるだけの理論を持ち込まなかったし、あまりに飛躍し過ぎていたから取り入れなかったのかもしれない。だけど、それをやっちゃうんだからスゴイ!w
 なぜ生身で宇宙を飛べるのか、ムリョウは別格としてもナユタがシングウを宇宙に独力で飛ばしたのはスゴイ。作中でも身体を憑代としてナユタが宇宙に飛ぶ場面が描かれていました。自らの身体を媒体にしてシングウの力を宿して宇宙に飛べるような実体を手に入れる。そんなところ?以前はナユタも自らの身体を憑代にすることができず、そのために空蝉の儀式によって精神的な部分だけ宇宙に飛ばすことはしていました。これも斬新だよね。
 こうやって見てみると、それまでのSF作品が空想ながら科学的らしい裏づけによって設定の説明を行っていたのに対し、ムリョウの宇宙では精神だけが宇宙を飛ぶなんていうオカルト的とも言えるような設定を用いています。いや、かえってオカルトじゃないのかもしれない?シャーマンなんかは脱魂によって鳥瞰的な視座を得ることがあるっていうのは有名な話ですし、そういった類のものなんだろうか。まぁ、シャーマンも実体化はできないんだろうけどwムリョウでの宇宙っていうのは、それまでの作品がロボットなんかの力によって宇宙を飛んでいた人間が、精神だけの存在や生身になって宇宙を飛ぶという画期的なものでした。
 もちろん、こんな設定は現実にはありえないだろう話だし、実際に可能性のある未来としても眉唾ものとしか言えません。だけど、有り得ないとしても思考実験的に宇宙を考えている点では見過ごせない。「かもしれない」という延長にある虚構が宇宙には成り立っているわけで、そこで展開される物語を紡ぐアニメにも少なからず汲み取るべき意味や意義はある。ムリョウの場合は宇宙を舞台にしてどうのこうのとするわけではなく、宇宙に対峙する地球っていう構図が良かった。ムゲンの力を管理抑制する場としての地球、それを管理する判定者、ムゲンの行った罪の償いとして地球を見守るセツナ、シングウの力を受け継ぐ天網の民、地球の行く末を見守るほかの星々の宇宙人、そういった一連の信じがたい事実を受け止める地球の人間などなど、虚構として構築された宇宙の世界観をもとに地球ではムリョウの物語が紡がれました。そこで描かれる人間模様だの関係性だのっていうのが大事なのかな?別に宇宙っていうテーマを選ばなくってもいいんだろうけど、宇宙は虚構性に満ち満ちているから虚構を描くにはやりやすいんだろうね。ムリョウは人間ドラマを生むだけの宇宙を設計できていたし、上手く学園生活と交錯させることができていたと思う。

■主人公としてのハジメ

 彼の言葉を借りれば「積極的傍観者」ってやつでしょうか。主人公らしい活躍と言えばラストしかないんじゃね?wほとんどが語り部的なポジションでしかなく、むしろ主人公はムリョウやナユタって感じ。だけど、彼らは謎めいた存在でもあり、主人公として一人称に置くわけにはいかなかったんでしょう。それに、彼のような普通の人間を視点に物語を進めたほうが視聴者は理解が早いと思う。お得意のメタなセリフも多くあったしねw
 彼の特徴は達観したような視座から物事を判断して、ぱっと解決策を見出すこと?そんな能力があってか、ラストでも活躍することができました。だけど、彼自身は成長した部分があるんだろうか?あんまり初回の頃とラストと変わっていないような…wナユタとの恋愛は確かに物語全体を通して展開していたけれども、何か精神的に成長した部分があったのかと言えば微妙なところもある。ハジメははじめからハジメだったwwそもそも、ムリョウの中で著しく変化したキャラクターっていうのは案外いなかったかもしれない。というより、あんまり目だって「変化させました!」と見せ付けるような演出しないからね。。むしろ、様々な天網の人間関係がハジメを中心にして次第にまとまっていく過程が描かれていたように思う。そういった意味でも、ハジメは「積極的傍観者」なりに人間関係に首を突っ込んで物語を牽引していく役割を担っていたと思えば、彼は主人公足り得たのかもしれない。

■ムリョウの正体

 う~ん、ムゲンからシングウとして顕現する能力を抜いた憑代部分だけの実体化した存在?ムリョウは神が実体化した存在なんだっていう話を聞くけれど、どうも納得が行かない。全能者ではないし、自然神でもないし、人格神でもない。なんか本当に捉えどころのない不思議なキャラクターって感じ。こんなキャラクターって見たことないw何考えてるのか解らないしww妖精っていうのが近い?

■提示される未来

 ステルヴィアでもそうだった。ムリョウでもラストでは子どもたちが力を合わせて自分達の未来を獲得するような展開でした。大人は常に見守るような立場であって、子どもは大人の想定を飛び越えるような結果を導き出す。こんな路線が両方の作品に共通して見られます。ジュブナイルの行き着く結末としては好都合だろうし、オチとしてもキレイにまとまる感じ。SFっていうと安易に未来っていうのは想像できるけれども、ムリョウで描く未来っていうのはそういう意味ではない。何にしろ、技術的や世界観として未来っぽいものを提示するのではなく、子どもたちの成長を通して精神性や姿勢として未来や将来へと時間が進んでいく様子が描かれます。大雑把に言えば「世代交代の物語」と言ってもいいかもしれない。単に主人公をはじめとする登場人物が個人的に成長するような描写だけではなく、登場人物全体が新たなステージに進むような展開を作品に盛り込むのっていうのはスゴ過ぎるwこれぞ究極のジュブナイルなんでしょうか?ww



 佐藤竜雄監督が今の世情を受けたならば、どんな「宇宙」を展開するんだろうか。ここで言う「宇宙」って言うのは実際に言う宇宙ではなく、アニメ的な虚構空間として展開させてきた思考実験空間ないしは共同幻想空間としての「宇宙」ということです。結局、広大な宇宙とは言え、そこに反映されるのは人間の思考なんだよね。考えてみれば、ステルヴィア以来は宇宙に発展性のある作品が見当たらない。確かに、『ΠΛΑΝΗΤΕΣ』(2003)『トップをねらえ!2』(2004)『蒼穹のファフナー』(2004)『交響詩篇エウレカセブン』(2005)『ゼーガペイン』(2006)『天元突破グレンラガン』(2007)『地球へ…』(2007)『BLUE DROP』(2007)『鉄のラインバレル』(2008)『マクロスF』(2008)『バスカッシュ!』(2009)などなど、連綿として宇宙を作品に取り込んだ作品は作られてきてはいる。だけど、新しい「宇宙」を提示できている作品ってないような気がするなぁ。。広がりがないっていうか尻すぼみっていうか、他のアニメのジャンルの要素と融和させる方向性は見られるけど、幻想の爆発や実験的な虚構としての新たな「宇宙」は見当たらない。多元宇宙論をベースに現在的な「新たな宇宙」ってダメですか?wどうやら笹本祐一のライトノベル「ミニスカ宇宙海賊」が2011年に佐藤監督の手によってアニメ化されるようですが、どんな宇宙になることやら…。原作付きっていうのがなぁ~(^_^;)

テーマ:見たアニメの感想 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2009/12/01(火) 03:30:40|
  2. 学園戦記ムリョウ
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