土星蜥蜴の「筆のすさび」

日々雑感。 アニメ文化に関する気ままな評論・感想を書き連ねます。

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『十二国記』#01「月の影 影の海 第一章」の感想。

「何があるの?ここに。」
「えっ、友達や学校が…、それに…。」
「友達や学校じゃなくて、あなたはここで何をしたいのよ!」
『十二国記』#01「月の影 影の海 第一章」より

以下、ネタバレが多分に含まれますので、ご了承の上でお進みください。


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 この作品は原作も読んでいる、というか、原作が大好きなので、そちらとの比較も行いながら感想をつらつらと書きたいと思います。いやぁ、近刊の「丕緒の鳥」は落ち着いた作風で十二国記の世界の成熟を見たように思いましたし、「落照の獄」ではちょっと社会への問題提起もあってか死刑制度などについて扱っていました。自分が狩獺と重なって見えてきてしまい、ちょっと焦った…w最近は自由に十二国記の世界を上手く駆け回っている感じですwこのまま単行本で泰国の結末も含めて出して欲しいなぁ(^_^;)もとい、アニメにおいては個人的には「図南の翼」が一番好きなので、これをアニメ化して欲しかった…。いや、原作ファンの人からしてみればアニメ版のオリジナル設定は不評のようですが…、実は脚本を担当した會川昇さんの『十二国記 アニメ脚本集 1』(講談社 2002)の「あとがき」によれば、杉本が虚海を渡るプロットはもとから原作者の小野不由美さんのアイデアとしてあったそうで、浅野も原作者の提案によるキャラクターだそうです。そこらへんの違いも見ながら、はじまり、はじまり~。

■異界訪問譚としてのファンタジー

 ファンタジーと言えば、異界訪問は定石なのかな?ハリー・ポッターが典型だし、『魔法少女隊アルス』もそうだった。ヒーローは外界からやってくるっていうのが決まり文句みたいな感じです。ポッターはマグルの世界から魔法の世界にやってきたわけだし、アルスも同様。そういった意味では水戸黄門だってそうだしねwいわゆる「客人」ってやつでしょうか。そして、問題を解決して去っていくのがヒーローです。
 この陽子の物語も同様。虚海を渡って十二国の世界に入り込み、そこで活躍するようになるっていう構図は他のファンタジーでもよく見かけるものです。でも、陽子はもとの世界に戻らないっていうところが独特なのかもしれない。おおよそは現実の社会に戻ってくることによって、異界での体験を現実に還元するような展開を最後に持ってくるんだろうけど、十二国記ではそれをやらない。言ってみれば、十二国の世界は完全なる夢の世界や「あっち」の世界というよりも、現実社会と相似の関係にあるもう一つの人間の社会っていう感じだから現実に近いと言えば近い。そう考えれば、もとの世界にわざわざ戻ってくる必要はないのかもしれない。
 現実の社会では陽子は人の顔色ばかり伺って生活をしているような、自己の意志を主張しない生き方をしていました。そのため、委員長は押し付けられるし、人からは優等生と言われながらも煽てられるし、友達付き合いを失いたくないから杉本と会話しないし、だけど優等生ぶって杉本にこっそりと話しかけたりするし、ダメダメですwだけど、それは現実の社会の秩序なり世界における話。これを十二国という環境のもとに置き換えて、様々な試練を乗り越えた結果、陽子は立派な人に成長しちゃいます。異界訪問譚の仕組みの核は、所属する世界や社会の秩序なり価値体系が大きく変更されることによって、従来の主人公のキャラクターを捨て去ることができ、新たな体験のもとによりよい人格なり資質を見に付けることができるっていうこと。これが主人公の成長を描写する好材料になるし、前後の変化を印象的に見せることにもなる。それに、現実社会への風刺や皮肉めいたものも織り込むことができるしねw十二国記もそういった異界訪問のファンタジーに類する作品ってことでした。

■脚本と演出

 脚本集を見ながらアニメを見ていると、ずいぶんセリフやカットに違いがあります。大筋は合ってるんだけど、セリフは大幅に変更されている箇所が多いし、場面だって省略されているところが多い。脚本は出来るだけ原作に近い筋立てで進めようとしているように見えるけど、どこで横槍が入ったのか実際の映像では原作とはだいぶ雰囲気の違うものになっちゃってる。。尺の問題が大きいんだろうけど、これって演出の手によるものだよね?

(放映版)
生A「委員長、席替えしませんか?」
陽子「席替え?」
生A「はい。この席もう飽きたんで。」
陽子「でも、学籍番号順ですから。」
生A「二年になったんだし、気分を変えたいんですけど。」
生B「はっきり言えば?杉本が嫌だって。」
生A「もう、せっかく遠まわしにお願いしてるのに。それなら、私もはっきり言うわ。杉本が隣だと暗くて嫌なの。お願い、誰か席を替わって?」

(脚本集)
生A「あ、ちょっと、待って。ねぇ、この席やだー」
生A「あたし、去年も杉本の隣だったんだよー」
陽子「でも名前順ですから…」
生B「えー、でも誰か杉本の隣になんなきゃいけないじゃーん!」
生C「誰か座りたいひとー」
生A「(笑いつつ)ねぇ、お願いよ、誰かぁ」

 たとえば、杉本いじめの場面はこんなに違う。放映版のほうがよっぽど陰湿さが増しているように見えます。だって、「せっかく遠まわしにお願いしている」って、ずいぶん嫌味ったらしいセリフに変わってるんだもんwちょっと臭いんだよね…。
 正直な話、もし原作を読んで先の展開を知らなかったら、確実に一話を見ただけで切り捨てていたと思う。セリフは宛てつけがましく教訓めいていて嫌だし、絵は動きもなく語ることもなく単にセリフの裏打ちをするだけだし、原作から離れているだけに魅力は減少傾向にあるし…。。席替えの例からもわかるように、やけに「いじめ」とか「優等生」とか「RPG的に現実を捉える子ども」とか「現実と虚構を混同する子ども」とか、社会的な問題とされるような事柄をセリフで無理に前面に押し出しているように思う。そんなことをやろうとするから、セリフばかりが先行しちゃって絵の表現が貧弱になってしまっている。ここまでセリフに頼ってしまうと、口数だけが多くって煩わしいだけでしかない。他にも厳格な父のいる家とか、バスの中でのやり取りであるとか、一連の杉本いじめとか、杉本が「あっち」の世界に強く反応するところとか、セリフに頼り過ぎていて映像とのバランスが崩れている。脚本では陽子の夢には迫り来る妖魔たちが出るとあるのに、実際には簡略な絵で済ませているところから察するに、あんまり絵に力を入れてなかったんだろうか。忙しかったのかな?初回なのに…w

■杉本と浅野の必要性

 脚本集のあとがきにも杉本と浅野を出した理由について書かれています。そこでは陽子のモノローグのことについて指摘されているんだけど、それとは少し違った角度で杉本と浅野の必要性を考えて見ます。
 陽子っていう主人公はアニメでは稀に見るくらい作中で大きく成長する人物です。最初と最後じゃ別人だもんねwそんな陽子の視点で作品を語るなんて、不可能なんじゃない?小説だったら「神の視点」でもある地の文での説明によって陽子の成長を客観的に描くだけの手立てが保障されるけど、アニメではそんな天の声は一部の作品を除いてほとんど用いられないもんね。そう考えると、陽子を客観視するための仕組みが必要になるわけで、そこで杉本と浅野の登場っていうことになるんじゃないのかな?陽子を物語の語り手にすることは無理だし、では、他の登場人物の視点を交えることによって客観的な視座を獲得しようっていうこと。

■原作との違い

 まぁ、一番の違いは杉本と浅野なんだけど、それだけじゃない。というか、彼らが登場することよりも、「いじめ」や「RPG的な発想」を大きく取り入れたところに違いがあるのかな?陽子の場合は優等生キャラを演じているっていう意志があったんだろうし、杉本は自分が誰かに選ばれた人間であるという「中二病」的な考えを最後のほうまで引きずるし、浅野も十二国の世界に渡って自らの「役」を果たせば帰ってこられると思っている。いじめの描写は原作に比べるまでもなく強調されていた。どうしても、ここらへんの「雑音」が多かった。本来ならば作品の持ち味があれば十分に楽しめるものなのに、そこに要らぬ教育的内容を盛り込んじゃったから作品としての質が下がったように思う。



 覚醒する前の陽子は嫌いだぁ!!早く成長しないかなw後の成長を大きく見せるためにも、今の陽子は頼りなく優柔不断で甘ったれでダメダメな人物として描く必要があるんだろうけど…。まぁ、しばらくは我慢なんだろうかww早く風の万里に進みたい。。楽俊を出せ!!w思えば、アニメにおいて最初と最後で劇的に性格が変わるキャラクターっていうのは見かけない。脇役ならまだしも、やっぱり主人公の心情を変化させるのって、アニメでは無理に近い荒業なんだろうな。。

テーマ:見たアニメの感想 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2009/12/02(水) 06:12:34|
  2. 十二国記
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