土星蜥蜴の「筆のすさび」

日々雑感。 アニメ文化に関する気ままな評論・感想を書き連ねます。

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『十二国記』#02「月の影 影の海 第二章」の感想。

「じゃぁ、あのケイキって人が、あなたを主だって?」
「うん。でも、何かの間違いだと思う。こんなヒドイ目にあわされて…、私の顔が変わっちゃったのも、全部あの人のせいよ。」
「そうね、何か間違いがあったのかも…。もしかして、主を間違えたのかも…。」
『十二国記』#02「月の影 影の海 第二章」より

以下、ネタバレが多分に含まれますので、ご了承の上でお進みください。


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 う~ん、もっと陽子の内面に迫ってもいい場面なんだけど、どうも淡々と話を流してるだけになってるような…。せっかく杉本を連れてきて言葉が通じないっていう事実を突きつける役割を持たせたのに、陽子の内面を浮かび上がらせるようなセリフがあまり与えられていなかった。もっと陽子は優等生ぶったようなセリフを多く吐いたほうが陽子の貧弱さが際立つし、それを杉本に罵倒させるくらいまで、やってもよかったと思うんだけどなぁ。。背景にしても同様に淡々と描くだけだし、全体的に特色のない感じに収まってるように思う。

■特色なく描かれる杉本と陽子

 もっと杉本には強烈な勘違いをさせるべきだし、そう描いてもいいところだと思う。自分が「選ばれた人間」であると誤解する設定のはずなのに、それを感じさせる部分は「そうね、何か間違いがあったのかも…。」ぐらいじゃなかった?ただ、あんまり誤解を強調しすぎても、なぜ陽子だけ言葉が通じるのか、どうして顔が変わったのか、といった兆候と矛盾することになるから微妙なんだけど…。そこらへんは、陽子が優等生ぶったり根拠のない責任感を持っていたり景麒にばかり責任を押し付けたり、そういった精神的な貧弱さを杉本に罵倒させることで、杉本に本当は自分こそ選ばれた人間なんだと勘違いさせるっていう筋書きを用意すれば、それほど矛盾なく筋を通すことができたと思う。つまり、こんなメソメソしている人間が「選ばれた人間」のはずがない、という論理を杉本に与えるってこと。なのに、本編では陽子もあんまり優等生ぶる様子もなく、杉本も自分こそ選ばれた人間だっていう素振りを見せない。淡白に村の住人とのやり取りをこなし、目を回すような経験したことのない出来事に翻弄されるっていう、それだけの話に収まってしまっている感じがする。脚本集を読んでいると、設定としては事前に杉本や陽子の内面を示すようなセリフが用意されていることがわかるけど、実際の本編を見た限りでは伝わってこないよね…。

■なぜ陽子の主観を取り入れなかったのか

 その脚本ってのも、脚本集に書かれているものと実際の本編とではずいぶんと変わっている。主な方針としては、陽子の主観を排することを念頭に置いているらしい。「あとがき」には次のように指摘があります。

「陽子の内心をナレーションやモノローグという形で表現しない理由」について、
「物語の前半、陽子は自分の中の未熟さに気付かず、自分を正当化し、言ってしまえば自分に嘘をついて、様々なことを考えます。やがてそうした自分の考え方が間違っていたことを陽子は悟っていくのですが、これがアニメの難しさ、声優さんの達者な演技でモノローグが加わってしまうと、そうした陽子の未熟な考え方が未熟に聞こえず、自分についた嘘が嘘に聞こえない。そもそもアニメでは、モノローグは真実の声という「お約束」がまかりとおっているため、滅多にモノローグで「自分に嘘をついている」という表現が通用しません。」

 だ、そうです。確かに、杉本や浅野を登場させないと、ずっと陽子が独白しながら物語を進めなきゃいけなくなっちゃうから、それはアニメにとっては難しい方法だと思う。まぁ、モノローグが真実の声であるっていうお約束が成り立っているのかどうかっていうのは疑問がないわけではないけど…。前回の感想でも書いた通り、杉本や浅野を登場させたことによって、陽子を客観的に見る視点を得ることになるわけだから、それは成功と言ってもいいと思う。もとより、原作者もこの設定を考えていたらしいしね(^_^;)
 だけれども、今回はこういった杉本や浅野が上手く機能していなかった。陽子自身についても、主観を取り入れなかったばかりか、内面を描くことすら満足にできていないような状態になっていた。こういった展開を見てしまうと、完全に陽子のモノローグを排除しちゃったっていうのは行き過ぎた考えだったんじゃないのかなぁ。もう一場面、杉本が寝静まったあたりで、陽子が一人眠ることができずにいるところでモノローグを挟んでもよかったと思う。そこで、陽子が現実の日本を回想しながら、他人から与えられた自分の存在位置を失う恐怖におびえる様子とか、他人に迷惑をかけることを嫌う気持ちとか、とにかく日本での「与えられた」生活に縛られているっていうことを念押しするような表現があっても良かったと思う。まぁ、何にしても尺の問題があるから難しいって言ってしまえばそれで終わりなんだけどね…w

■甘える陽子

 人に甘えっきりの陽子っていうのも、成長した後の陽子の印象が強いだけに珍しいように感じてしまうw陽子は家に帰りたがったり、杉本を守ってあげようと考えるなんて優等生ちっくな考えをのぞかせたり、親が心配していると不安に思ったり、日本での生活に縛られている様子が読み取れます。でも、これらの陽子の立ち位置ってのは、どれも他人から与えられたものでしかない。自分が何か主体的に判断をして行動していたのではなく、他人から言われてやっていることばかりです。そういった生活に半ば嫌気をのぞかせていたこともあった。たとえば、委員長をやりたくないって言っておきながら、実際には他人からの要望を拒否できずに委員長になってしまった。でも、やっぱり十二国に来ても優等生でありたいという気持ちのほうが強く出てしまったってところが面白いのかな。。結局、陽子は日本での生活を憂鬱に思っていたんだけど、それは単なる甘えでしかなかった。他人から与えられた自分の居場所に安住するばかりで、決して自分で居場所を作ろうとは思わなかった。まだまだ未成熟な陽子の様子が描かれていると考えていいと思います。
 そして、そういった他人に甘えきった生き方を見直して、自立しようとする物語が今回の本筋になるんだと思う。要は自我を確立して自立するための旅ということ。身体や顔も生まれ変わったように変貌したことだし、中身も生まれ変わろうってことですw姿が変わったっていうのも、胎果である陽子が十二国での本来の姿に戻ったというだけではなくって、そういった精神的な「自立=第二の誕生」ってのも暗に含んでいるものと考えるべきなのかな?

■脚本の手入れ

 脚本集を読んでいると、あまりの手入れの多さにびっくりしますwだって、ほとんどのセリフが変わってるんだもん。。ある場面が丸ごとカットされるのは尺の問題からして仕方ないんだろうけど、細々とセリフが変わっているのは気になる。どの段階で手入れがあったんだろうか?そこらへんの事情は書かれてないんだよね…。誰が最終的な放映されたセリフを決めたのかっていうのがわからない…。演出なのかな?それともアテレコの段階で協議して、いじったとか?脚本の仕事のはかなさを感じますw

■美術・背景

 なんかさ、背景がしょぼい…。無機質でリアリティーがないんだよね(^_^;)ただ、「ここに森がありますよ~」とか「家ですよ~」っていうメッセージくらいしか伝わってこない。。しっかりと描けば、家だって生活を感じさせるような表現は可能なんだろうし、そうなれば作品の世界に奥行きが出ると思う。なのに、そういった細かい気配りが見られない…。かなり残念。『精霊の守り人』と比べてしまうと、あまりにも味気なさ過ぎるw
 しかも、この無機質さって作品の中身としても問題が出てしまうレベルまでヒドイような気がする。。特に日本の教室なり家なりを無機質に描いてしまうのは、全体的に誤解を招く可能性すらある。だって、日本は現実の世界なんだから、無機質に淡白に描いてしまったら、どうしても夢の中の世界としての意味合いを持つことになりかねない。よく回想で登場することになるだけに、余計に夢っぽくなっちゃうよね…。現実の日本を細かく描いて、十二国に来たら淡白に描くっていうのならわかるけど。。逆にやってしまうと、あたかも日本のほうが非日常になってしまう。。いや、両方とも緻密に描いてリアリティーを持たせたほうが、後に十二国を日常の世界と捉える陽子がいる以上は正しいんだろうけどねw日本を淡白に描くことで、陽子の日本での生活に対する疎外感や虚無感を表現したにしても、十二国の描き方が杜撰なだけに意味を持たない。世界観を陳腐なものに貶めている大きな原因が背景にあるように感じられて仕方がない。



 もうちょっと何とかして欲しいところだなぁ。。原作が原作なだけに、惜しい。初回と第二話がこんな感じってのは、アニメとして不味いんじゃない?ツカミですべってるってのは致命傷になりかねない…。さて、次回から陽子は苦難に揉みに揉まれるはず…wそろそろ蒼猿も登場するかな?

テーマ:見たアニメの感想 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2010/01/09(土) 00:01:00|
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