土星蜥蜴の「筆のすさび」

日々雑感。 アニメ文化に関する気ままな評論・感想を書き連ねます。

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『十二国記』#07「月の影 影の海 第七章」の感想。

「世界も他人も関係ない。私は優しくしたいからするんだ!信じたいから信じるんだっ!!」
『十二国記』#07「月の影 影の海 第七章」より

以下、ネタバレが多分に含まれますので、ご了承の上でお進みください。




 これぞ『十二国記』の一番の名シーンであって、陽子が成長を遂げて脱皮する瞬間でもあった。けど…、なんだろう。。原作小説の文脈に寄りかかっていて、アニメ単独の表現としては文脈が欠落していたように思う。妙に説教くさい朱旌の立ち位置と言い、陽子がV字で精神的なドン底から復帰したことと言い、脈絡もなく原作の一部を継ぎ接ぎしたように見えてしまう。とは言え、これだけの名シーンが廃れるわけがないw他人の言うなりであるいい子ちゃんだった過去の陽子とおさらばして、自分の意志で行動する強い陽子へと成長した。杉本にしても自分を取り巻く世界からの要求を求めていて、この二人は世界や父母や友達といった周囲からの要求に寄りかかった生き方をしてきたんだなぁと思う。陽子は相手に合わせた結果としていい子ちゃんになっていたけど、杉本は相手が自分に会わないから現実世界を否定して新たな世界である十二国に期待した。そこが非常に対比的でいい設定だとは思うんだけど、如何せん、生かせていないように思うwせめて、杉本に「あんな私を否定する世界になんて帰りたくない…。私は私を認めてくれる世界で生きるのよ!」とか言わせれば、まだ対比が鮮やかになってよかったと思う。セリフにしなきゃ、伝わらないってやつでしょ?w

■裏切りへの憎しみを断ち切る陽子

「バカか、お前は…。あいつはお前を利用するために助けたんだぞ!?善意で助けたわけじゃ…。」
「善意でなくてもよかったんだ。私を助けてくれたことには、代わりはない。」
「あいつはお前を信用させて、お前を利用して、そして、お前を裏切るんだ!」
「裏切られたって、いいんだ!裏切られたって、裏切ったヤツが卑怯になるだけだ。」
「お前も裏切らなきゃ生きていけないんだよ!」
「私は死なない。卑怯者にもならない!善意でなければ信じられないか。相手が優しくしてくれなければ、優しくしてはいけないのか!そうではないだろう…。私が相手を信じることと、相手が私を裏切ることとは、何の関係もなかったのだ。…そうだ、私は一人だ。だから、私のことは私が決める。私は誰も優しくしてくれなくても、どんなに裏切られたって、誰も信じない卑怯者にはならない!」
「お前は死ぬんだ。家にも帰れず、誰からも振り向かれず、騙されて、裏切られて…。」
「世界も他人も関係ない。私は優しくしたいからするんだ!信じたいから信じるんだっ!!」
「お前は死ぬんだァ!!」
「どけっ!!私は楽俊のもとに、行くんだ!!」

 つい二話くらい前からグレ始めた陽子…。早くも成長しちゃいましたw今回の話でも最初は「ネズミは…、私のことしゃべらないだろうか。」だなんて疑心暗鬼にかられながら楽俊を置いてきぼりにしちゃうし、妖魔を倒すときには嬉しそうな顔をしていたwしかも、「私は…、獣だ!!」と言って、自分が人外の存在であるということを口実にグレ度が高まる感じでもあった。

「私がみんなを助けたいだって?何のために…。お前達が教えてくれたんだ。人は結局、自分のために生きてるんだ。誰であろうと、他人のために生きることなど、できるはずもない!」

 このセリフで陽子のグレた具合も極まった感じ。今までは人の言うことに従順に生きてきた陽子にとって、裏切られるということはダメージが大きかったと思う。彼女は人の言うことに従っていれば平和裏に生きていられるという感覚が身に付いていて、それが十二国に来てから裏切られることになる。そんなもんだから、人のことを信じられなくなるんだよね。

「トドメを刺しに戻るのかい?っふっふっふ、ネズミが心配で戻るんだよなァ。」
「そうだ、このまま見捨てては…。」
「そりゃ、心配だよなァ。生きてちゃ不味いことになる。」

「利口になれよ!さんざん騙されてきたんだ…。どうすりゃいいかぐらい、もうお前にだってわかるだろ?」
「人がたくさん、ネズミも…、ケガをして死に掛けていたんだ。助けたい!」
「キレイゴトを…。誰かを助けたいなんて、思ったことないくせに。」
「浅野くんや杉本さんを助けるために剣を振るった!」
「そうすれば二人が誉めてくれたからだ。お得意のよい子になっていただけさ!」
「違う!!」

「ネズミを…、見つけたいんだ。」
「そして、トドメを!!」
「違う!命の恩人だった…。それを見捨てて…。それだけで、それだけで、こんなに苦しいのに。」

 そして、楽俊を置き去りにしてきたことを後ろめたく感じてしまい、見捨てるか助けるか葛藤することになる。でもさ、さっき「他人のために生きることなど、できるはずもない!」って断言していたのに、なぜ陽子は楽俊を助けに戻ろうとしたんだろうか…。どこから助けようという動機が出てきたの?確かに人を助けることは素晴らしいことなんだろうけど、なぜ人を見捨てて心が苦しくなるのかという点については語らなかった。人を見捨てても何とも思わないようになったのがグレた陽子だったのに、どうしてこの時点で気に病んでしまうのか動機付けが不十分に思える。そして、冒頭に掲げたセリフに移るんだよね…。陽子は善意っていう言葉に引っかかって反論するんだけど、それはそれでいいんだけど、ちょっと話をすり替えてない?wなんだか文脈がおかしい気もするなぁ。。

「世界も他人も関係ない。私は優しくしたいからするんだ!信じたいから信じるんだっ!!」

 とは言っても、このセリフはいいよねぇ。今まで他人の言うなりであった陽子が、自分の意志で行動を決めることを決意した瞬間だった。さっきの動機付けの不十分な部分についても、要は、自分の素直な気持ちを裏切りたくないってことなんだろうか。そう考えれば、素直には楽俊を助けたいと思った動機があって、そう思った自分の意志を尊重するために助けようと行動を起こすという展開になるのは自然かな。。楽俊を見殺しにすることは、助けてくれた恩人をそのまま放置することになる。それでは陽子自身が他人を利用して、他人の善意を裏切ったことになってしまう。他人が自分を裏切ることを嫌っていたグレた陽子からしてみれば、自分も他人を裏切ることになって自己矛盾を起こしてしまうのかなぁ。。そうなると、それをきっかけとして自分の意志によって相手を助けようとする動機が生まれるんだろうか。。他人の気持ちを裏切ってでも生きるべきなのかどうかと、他人の意志に頼っていい子を演じながら生きるのかどうか、この二つの話が交錯してしまっているようにも思う。最終的には陽子の資質として他人を裏切る自分を許せないから自立へと導かれているけれど、もし裏切ることだって自分の意志で責任をもってやるなら仕方ないって発想が与えられれば崩れてしまうんじゃないのかなぁ。。ちょっと整理しきれないところではある。

「お父さん、お母さん…。私、いい子じゃないよ?それでも、いい…?」

 そして、最後には自分に「いい子」であることを要求してきた父母と決別するんだよね。陽子自身もその要求に従っていい子であろうと素直にしてきたけれど、楽俊や蒼猿との関わりから自身の意志で行動しないと裏切りに対する憎悪の連鎖が止まらないことに気付いた。他人に対していい顔を作って八方美人でいると、結局は多くの人々から求められるそれぞれ違った「いい子」像に翻弄されてしまうことになる。それに、裏切られた場合には目も当てられない。そこで、自分で決めたことなんだから恨みっこなしという論理を引っ張り出して、自立するとともに八方美人ともおさらばするってことなのかな。自分の生き方や存在を他人に任せっきりだった陽子が、ここに来て自分の責任で自分の生き方やあり方を決めるようになったということだろうと思う。

■陽子と杉本の対比

「連れてってよ、私を…。私の場所に連れてって…。」

 陽子はそんな感じで自分を取り巻く世界との関係性を改めることになった。今までは周囲から要求される「陽子」像を演じることをやっていたから、それはそれで穏便に行く部分もありながら翻弄されるばかりだった。そこを自分の意志で行動するようになったことで、自分から周囲に対してアプローチするように変わったんだよね。
 杉本は従来の陽子に対して嫌悪感を強く示していた。蓬莱にいたときだって学校で愛想を振りまく陽子に一瞥を投げかけていたし、浅野との関係においても同じようなことを指摘していた。そんな流れもあるから、陽子と杉本はキャラクターとして違った資質を持つものと思ってしまう部分もある。けれど、実は根本的な部分は一緒なんだよねw
 杉本は自分こそ選ばれた人間なんだと何度も主張している。そして、今回は「私の場所」っていう表現を使っている。彼女は蓬莱の学校では確実にクラスに馴染むことのできていない、イジメられる対象だった。言ってしまえば、学校という社会が杉本を否定してきたということと同義であろうし、それは「私の場所」ではなかったことになる。それに対して、十二国に来てからというもの、杉本は自分こそこの世界に選ばれた戦士なんだと言う。実際は違うんだけどねw重要なのは、杉本が世界に選んで欲しいと思っているということ。杉本の場合は、決して自分の内面を変えようとはせずに、自分に見合った世界や自分を認めてくれる社会を求めている。蓬莱では自分を認めない友達や世の中がいけないのであって、今度の十二国であれば自分の素晴らしい能力に気付いてくれるはずっていう期待がにじんでいるように見える。つまり、杉本の言う「私の場所」っていうのは「私を認めてくれる場所」のことであって、自分を見つめなおすことのない聊か傲慢な考え方でもあると思う。
 陽子も「いい子」を演じているときは世の中の要求に応じて行動することを心がけていた。それは自分と世の中を合わせるための手段でもあって、主導権は自分の周囲を取り巻く世の中にあった。実は、杉本もその点では同様で、自分と合わない世の中を否定して、自分に合った世の中へと渡り歩く感じ。これは一見すれば杉本が自分の意志でやっていることのように思うけど、主導権は世の中のほうにあるよねwだって、世の中に否定されたら終わりだもんww
 そんな感じで、実は陽子と杉本が表裏一体の関係として機能していたと思う。その上で、陽子は強い矜持と慈愛の心から自立を果たすことになる一方、杉本はいつまでたっても世の中に踊らされることになる。そして、ついに自分の非力や自分を取り巻く環境に依存していることを認めたのが今回のセリフ「私の場所に連れてって…!」だったと思う。

■言葉足らず

「あいつを助けて、どんな得がありますか?」
「得ばかりかなぁ。安全に旅ができて、しかも人助けができて、気持ちがいい。」

「微真さんの顔色を見て、私が危ないって思ったって…。私の母は、私のことを何もわかってくれなかったから…。」
「母親だからって、なんでもわかるわけないじゃないか。大事なことはちゃんと言ってくれなくちゃ、親だってわかるわけないさ…。あんたは言ったのかい?わかって欲しいことを、口に出して…。」

「私は、あなたを…。」
「あのね、あのときと、あなた顔が違うわ…。知ってた?きっといっぱい辛いことがあっただろうに…。とてもいい顔をしている。だから、一緒に行こうって言ったの。謝ることなんて、何にもないわ。」
「楽俊だ。楽俊がいたから、私は少しだけマシになれた…。」

 この三つのセリフ、どうにも文脈もなく出てきたように思う。っていうか、説教臭いんだよねwだから?って感じ。何の物語もなく急に言われるから、裏付けも動機もなくって、説教に思えるんだよね。
 っていうか、陽子の精神的な成長に関しても文脈の欠如が甚だしいと思う。だって、二話くらい前に急な展開から陽子がグレちゃって、それで今回でまた急に前向きに戻ったわけでしょ?その間にたいした出来事って言えば楽俊を置き去りにしたくらいで、別段何もなかった。先に成長ありきで物語が考えられてしまっていて、その過程が疎かになっているように思う。言葉足らずだよね…。そりゃぁ、尺の問題なんかもあるんだろうけど、それじゃぁ本末転倒だよ。
 小説で語られた内容を知っていれば、脳内補完で文脈を補えるんだけど、知らないと辛いでしょ。蒼猿を切り倒した後に鞘が光っている描写だって、何の説明もないままスルーしてしまったwあれはさすがに笑ったね。。小説を知らないと、何の描写だったのかわからない。その上、アニメだけ見ていると、たったの一瞬だけ光っているのが見えて、何のメッセージを込めたかったのか理解しないまま次に進んでしまう。いくら伏線とは言え、見せ方として無責任すぎるよねw

■天のこと

「天が王を怒っておられる。天地が荒れるのは、王の治世が行き届かないからだ。そんなことも、知らんのかね?」

 王の存在を世の中を統治する中間者と考えるのは、いかにもな「天」の発想だよね。だから、天命が下るという表現があるし、天のことを「上帝」と呼ぶこともある。まぁ、王の治世が行き届いていれば灌漑や農具の開発といった政策を行うために、田畑が荒れることはなくなる。故に天地が荒れるのは王のせいであって、王の任命者である天にかこつけて「天が怒っている」と表現するんだろうと思う。っていうことは、天命が変わったということなんだよね。今の王では世の中が治まらないから、別の王に変えなければいけない。そして、それを「革命」と呼ぶ。革は「あらためる」の意味だから、言い換えれば天命を改めるということ。易姓革命ってやつだね。



 あ~、一番の楽しみが終わってしまった…wでも、前向きな陽子って好きだから、これからの話は気持ちよく見られるかもしれない。陽子のこの成長があってこそ、「風の万里 黎明の空」が楽しくなるってもんだ。あの「いい子」ちゃんだった陽子が威厳たっぷりで謙虚な王になる成長の過程を見るっていうのが、十二国記の一番の見所だよね。。

テーマ:見たアニメの感想 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2010/04/12(月) 00:01:00|
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