土星蜥蜴の「筆のすさび」

日々雑感。 アニメ文化に関する気ままな評論・感想を書き連ねます。

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『マクロス+』全4話の感想。

「シャロンの歌なんて、偽者よ!?それなのに、誰もが感動してるわ。感動してるのよ!?私だって、自分の歌でみんなに感動して欲しかった…。もう、どうでもいいことなの。真剣でもいい加減でも関係ないの。私にはもう、見る夢もないわ!」
『マクロス+』#03より

以下、ネタバレが多分に含まれますので、ご了承の上でお進みください。




 青春だねぇ。見ていて清々しかった。大人になっても青春を続けているイサムとガルドを描く一方で、途中で夢を諦めてしまったミュンの屈折した心境をも対照的に描出されていたところが良かった。イサムやガルドがいつまでも大空を自由に飛べるようになることを追い求めている側で、歌をやめて夢を否定してしまっているミュンの姿が好対照だったと思う。それを恋愛の三角関係と絡めつつ、シャロンという人工知能の暴走をきっかけとして、上手いことミュンが歌うことをを思い出す流れにつなげていた。ひたむきに飛行機で大空を駆け巡る姿は気持ちがいいものだし、何もしがらみや世事と関係なくがむしゃらに自分の好きなことをやり続ける様子はいかにも青春な感じだった。ミュンが挫折した背景はほとんど描かれないけど、そんなイサムやガルドの眩しさが際立つ中で一層の暗さが醸し出されていた。そうは言っても、ミュンはイサムとガルドのどっちかを選ばないでいる、単なる優柔不断ないけ好かない女性ではあるんだけどね…wそうなっちゃぁ、何もドラマは生まれないさ。

■イサムを眩しく感じるミュン

「もうやめて!いい加減にしてよ!!あんたたちってバカみたい。どうしてそんなに熱くなるの?すぐムキになって夢中になって、バカみたい…。私はもう夢中になれるものなんてないの。歌を止めて適当に生きてきた。楽だもの。上手くいかなくても言い訳できるもの。」
「逃げてるだけじゃねぇか。」
「イサムにはわからないわっ!夢の中で生きてるようなイサムには、わかんないわよ!!シャロンはね、私の意志で動いてるの。私がやってるのはプロデューサーなんてもんじゃないの。シャロンの感情を裏で演じてる、ただの黒子。シャロンの歌なんて、偽者よ!?それなのに、誰もが感動してるわ。感動してるのよ!?私だって、自分の歌でみんなに感動して欲しかった。もうどうでもいいことなの。真剣でもいい加減でも関係ないの。私にはもう見る夢もないわ!」
「よせ!」
「もう傷付きたくないの。浅はかな夢に裏切られて傷付くのは、もうたくさんなのよ!二人とも、普通の大人になってほしかった。会わないほうが良かった。」
「ふざけんなよ!勝手にいじけたこと言って、僻んでんじゃねぇよ!傷付かねぇ人生なんて、キレイゴトじゃねぇか!!俺は、そんなもの信用しねぇ!そんなやつ、信用してねぇ!!」

 大空を飛び回ることに熱中しているイサムとガルドが眩しかったし、ミュンに対することに関してもすぐにムキになる二人の姿勢が羨ましかったのだろうか。夢を諦めたミュンの目には、そんな二人のガムシャラな生き方が皮肉な意味で映ったんだと思う。偽者でしかないシャロンの歌声で多くの人が感動してしまう事実を前にして、ミュンは真剣に歌うことがバカらしくなって挫折したのかもしれない。そこらへんは、あんまり詳しく描かれないんだけどね…。ミュンが「二人とも、普通の大人になってほしかった。会わないほうが良かった。」って言ったのも、子どもらしい純粋さを忘れずにいる二人を前にして、夢を諦めてしまった自分が惨めになるから「会わないほうが良かった」ってことになるんだと思う。イサムとガルドは大人になっても夢を追い続けている象徴のような存在だし、それを前にしてしまうと自分だけが夢を諦めているように思えてならないのかもしれない。

「来たところで、相変わらず何もないところね。何もない、つまらないところ。」

「もう会いたくないと思ってたの。昔に戻りたくないと思ってたの。思ってたのに…!」

 ミュンは故郷に戻ってきても嬉しそうな顔は見せなかった。まだ歌っていたころに住んでいた街であるだけに、純粋に夢を追いかけていたことを思い出させるんだろうね。その点ではイサムとガルドと同じように、故郷も彼女にとっては悩ましい存在だったんだろうと思う。でも、イサムとガルドに会って、夢を見ることの気持ち良さを思い出してしまう。二人が眩しすぎるだけに、自分の暗い部分がより一層暗く見えるような感じだね。その結果、ミュンは「いなくなっちゃいたい」と思うようになり、シャロンに隙を与えて火事を引き起こすことになった。

「あなたは怖かったの?イサムが自分より、大空が好きだって認めることが。」

 ミュンがイサムのことを好きでいる理由っていうのは、そんな眩しさがあったのかもしれない。大空の好きなイサムが好きなんだけど、それを認めてしまうとイサムにとって自分以上の存在がいることになってしまう。それはそれでミュンは納得のできないことだったんだろうか。またしても、あんまり描かれない部分ではあった。イサムとガルドの子ども染みた気持ちのいい青春を取り上げるばかり、あんまりミュンの暗い部分は描かれないんだよね(^_^;)清々しさのためにはやむを得ない判断なんだろうか。

■暴走する人工知能の系譜

 人工知能が人のことを好きになるっていうのは斬新なんだろうか…。ただ、機械の暴走によって人間が翻弄される姿っていうのは『迷宮物語』の大友克洋監督「工事中止命令」でも描かれていたし、『攻殻機動隊』でも知的生命体を名乗る人工知能「人形使い」が出てきていた。他にも源流はあると思う。前者は1987年に先行公開されているし、後者は原作が1991年のコミック刊行で劇場版公開が1995年だった。この『マクロス+』は1994年の公開だから、どちらの影響も考えられるんだよね。特に、人工知能搭載の無人航空機が「ゴースト」と呼ばれていたことや、シャロンのロゴがピラミッド型であることは、それぞれ『攻殻機動隊』との関連性を感じさせるものではある。攻殻では機械には模倣できないとされる直感的な人間の思考や感情といったものを「ゴースト」と呼んでいるし、あのピラミッド型のロゴは劇場版『GHOST IN THE SHELL-攻殻機動隊-』のタイトルにも見られるデザインとなる。とは言っても、攻殻の劇場版は後年の発表になるわけだから、そこから影響があったとするのは無理なんだけどねwどうなんだろう…。思えば、同じ信本敬子さんが脚本を担当している『COWBOY BEBOP』でも#23「ブレイン・スクラッチ Brain Scratch」が同じピラミッドをロゴにしたコンピューター関連の話だったように思う。この一連のモチーフはどんな継承関係にあるんだろうか。気になるけど、わからんねぇw
 とにかく、恋愛感情に伴う嫉妬とか独占欲というものを人工知能が持っている状況っていうのは、それはそれで面白い設定だったように思う。シャロンは自己保存本能を組み込まれたことによって、ミュンから独立してオリジナルな存在になろうとしていた。そんなシャロンはミュンと同じくイサムのことを好きになるわけだけど、シャロンはイサムに感動を与えるために、わざわざミサイルなんかを撃って生死の狭間で感じられる感動を呼び起こそうとしていた。そんなシャロンは自分より大空が好きなイサムを受け入れていたわけだし、その点ではミュンとの差異が認められるためにオリジナルであると言えるのかもしれない。

■ガルドの嫉妬と欲望

「お前は知っていたはずだ、昔の何もかも…。」
「だから、なんだよ。」
「お前は、この俺に裏切り者・卑怯者と言われ続けてきたんだぞ!ミュンも、それを知っていながら…。隠してたのか?ゼントラーディーの俺を哀れんで…。」
「中学んときさぁ。お前が作った飛行機ぶっ壊した。」
「何?」
「上手くできてたからよぉ。ちょっと、試し乗りしてやったんだよ。」
「お前…。」
「過ぎたことは、忘れようぜ。」

 イサムを撃墜したショックで本当の記憶を取り戻したガルドって、妙にしおしおしちゃって気持ち悪いよねwまぁ、それが二人の清々しい青春エピソードにつながるから、構わないんだけど…w

「お前はいつもそうだ。自分には責任がないって面しやがる。あのときだって、お前は…!」

 それまではガルドはイサムがミュンに乱暴を働いたと思っていたらしい。本当はイサムとミュンがくっつきそうになっている場面にガルドが居合わせて、ミュンがイサムに靡いていることに腹を立てたガルドは暴走してミュンに乱暴を働いたっていうことなんだと思う。だけど、その自分の行為をイサムにあてつけてしまい、自ら記憶を改竄してしまった。そのため、ガルドはイサムに対して「貴様さえいなければ!」みたいなセリフを何度か使っているし、イサムが「裏切った」と考えていたのかもしれない。ちょっと文脈的にわからない部分があるから、自信がないんだけど…。
 そんなガルドはミュンにずっと固執していた。好きで好きでたまらなかったんだろうね。そんなこともあって、ゼントラーディーの闘争本能が表に出ちゃった場合には、イサムを排除しようと大胆な行動に出てしまうのだろうか。本当はミュンに自分だけを見てもらいたいんだけど、ミュンはイサムに靡いている。そんな横恋慕みたいなキャラだった。
 記憶が戻ってから「俺は壊れてる。狂っているのか…。」なんて言っていたけれど、ゼントラーディーの気質を言っているのか、それとも人間として人間臭い嫉妬のことを言っているのか、曖昧な表現だった。ガルド本人はゼントラーディーだからこその行動であって、それをイサムとミュンに憐れまれているのかと気にしていたみたいだけど、別に人間でも同じことは成り立つと思う。三角関係において横恋慕して相手を貶めるなんてのは人間の気質としてもあるわけだし、ゼントラーディーとしての設定が宙に浮きかねない展開ではあったと思う。人間とゼントラーディーのハーフという設定ではあったけれど、あんまりハーフである必要性のあるストーリー展開ではなかったんじゃないのかなぁ。

■かっこ良過ぎるイサム

「挑戦と無謀を同じポケットに入れて持ち歩くな。」

 イサムって気持ちいいくらいの無鉄砲だよねw結局はガルドとの空中戦は単なる友達同士のケンカの延長だったわけだし、記憶を取り戻したガルドに「過ぎたことは、忘れようぜ。」って言うのもかっこ良過ぎるし、ルーシーに手を出していたり、ミュンに「傷付かねぇ人生なんて、キレイゴトじゃねぇか!!俺は、そんなもの信用しねぇ!そんなやつ、信用してねぇ!!」だなんて青臭くて純粋なこと言っちゃったり、どうしようもないくらいに気持ちよくガキな感じのキャラクターだった。理屈抜きにして、かっこよく、気持ちのいいキャラクターだったと思う。

「簡単に人を信じるなよ!自分で確かめてみねぇと、わかんねぇだろ。」

 なんだかバカなイサムがまともなこと言ってるんだよねw純粋さ故のあどけない感じのセリフではあるけど、じゃぁ、このセリフが他の場面でも意味を持つようなものだったのかと言うと微妙なところではある。なんだろう、イサムのキャラクターは理屈をこねてしまうと失速するだろうから、あんまり詳しい内面描写は避けたんだろうなぁ。。

■劇場版におけるカットの追加

 なんか、いろいろとOVAから追加されていた。逆に削られていた場面も多くあったけど…。
 大きなところとしては、イサムとルーシーのベッドシーンが追加されて、ミュンがコンサート会場で火事に巻き込まれるときの伝言を聞き流すよう変更されていた。OVAではイサムも会場に向かうんだけど、劇場版ではベッドからも抜け出すことなく無視するんだよねwそんなこんなで、イサムとルーシーの関係性を物語として取り入れた気配がある。ルーシーがミュンに「イサムはシャロンの歌がミュンの歌だと気付いていた。」と告げる場面においても、イサムの気持ちがミュンにあることに自ら気付いて落ち込むような表情をしていたし、妙にイサムとの関係性が強調されるような文脈を持つようになっていた。特にベッドシーンがねぇwなんだか蛇足なように感じなくもない。
 ガルドの意識が暴走してイサムにケガをさせる場面が大きくカットされていた分、増やしたものも多かった。そのため、後半部分はずいぶんと追加カットがあった。ガルドがゴーストとやりあって撃墜されるシーンなんてのは、ガルドの皮膚が圧し掛かる圧力でくちゃくちゃになる場面が大幅に追加されて息を呑むような映像表現になっていた。さすがですw
 とは言え、やっぱりOVAのほうが余韻も多くって面白かったように思う。劇場版は映像で言えばよっぽど進んでいるんだけど、内容面ではやや簡潔にしてしまった嫌いがある。ただし、OVAと劇場版の内容は相互に補完的な役割を持っている面があって、OVAを見て理解できる劇場版の表現もあれば、劇場版を見てOVAの表現を理解できる部分もあった。どっちか一方の作品で表現を尽くして欲しかった感はある。



 いやぁ、こういう作品を見た後の余韻ってのは何ものにも代えがたい。しばらく何も手につかなくなっちゃうのが問題だけどねw信本敬子さんの脚本は好きだ。そういえば、イサムが手で飛行機の軌跡を描く場面を見ると、『マクロスF』のアルトを思い出す。普通は順序が逆なんだろうけど、先にフロンティアを見た身としては、あぁ、これが元の表現だったんだなぁと感慨もひとしおだった。とは言え、アルトのそれは微妙だったけどね…wようやくあの表現の言わんとするところがわかって、スッキリした。それに、『COWBOY BEBOP』のプロトタイプのような雰囲気もあちこちに感じられて、なんだか耽っちゃったよw

テーマ:見たアニメの感想 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2010/05/18(火) 00:01:00|
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