土星蜥蜴の「筆のすさび」

日々雑感。 アニメ文化に関する気ままな評論・感想を書き連ねます。

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『十二国記』#08「月の影 影の海 第八章」の感想。

「一度は帰りたくないと思った。でも、違う!私は怠惰だった。卑怯だった。ただ楽をしたくて、みんなと対立しなかっただけ。でも、もう一度帰れれば、帰ったら、前とは違った生き方ができる!努力するチャンスが与えられれば、もう一度やり直してみたいのよ!!」
『十二国記』#08「月の影 影の海 第八章」より

以下、ネタバレが多分に含まれますので、ご了承の上でお進みください。




 なんだか言葉だけが浮付いちゃって、見ていて白けちゃう感じ。妙に教訓めいたセリフが具体的な行動を伴うことなく語られるから、半ば嘘くさく聞こえてしまう部分がある。原作では陽子と楽俊の二人に絞って物語が展開されるけど、アニメでは他のキャラクターとの関わりを多く盛り込んでいるだけに、全体的に薄味感が出ているようにも思う。そりゃぁ、小説とアニメでは表現方法も異なるから見せ方や内容が違ったものになるのは当然だとしても、単純に原作抜きでアニメとして見たところで変わらないなぁ。むしろ、原作があるから、何とか堪えられる感じがするw


■噛ませ犬・杉本のご都合的な退場

「勇気があるんだなぁ。ちょっと前の私だったら、きっと見ていることしかできなかった。」
「それが普通です。」
「うぅん。臆病だったんだ。人の顔色を窺って、誰にも嫌われず、気に入られるようにばかり考えていた。誰とも対立しないことを…。」
「いい子でいたかったんだね。」
「そう、いい子でいようと思ってた。それで、いろんな人を傷つけていたんだ。親や先生や友達を…。だけど、もう、もう帰れない。」

 最初は学校の委員長キャラとして「いい子」を演じていた陽子だったけれど、それが十二国に渡って他人の裏切りや自分の欺瞞に悩まされ、蒼猿との対決を経て見事な成長を遂げたという筋書きを押し出しているらしい。ちょっと前の私だったら、猫の半獣をイジメていた元役人たちにも「いい子」でいようとするため、猫の半獣を助けようとは思わなかっただろうってことだね。言い換えれば、それまでの陽子は自分の信念に従って行動することをせず、周囲の見る目ばかりを気にして行動していたっていうことだと思う。簡単に言ってしまえば八方美人っていうことなんだろうけど、それを陽子が自分で分析して語っていることが違和感ありまくりなんだよねw本来ならば具体的な陽子の行動によって、これらの成長の度合いを示すべきなんだろうと思う。その点、ここではセリフで語ることによって、すべてを済ませようとしているから微妙な感じ。猫の半獣を助けるだけでも多少なりとも成長を示すことはできていただろうし、それを見た杉本のセリフによって成長を印象付けることだってできたはずだと思う。陽子が自分の成長の具合を自ら語るということは、どうにも彼女が自惚れているような様子さえ感じ取れてしまって白けるなぁ。。例の「わかりやすさ」を重視するっていう観点からの脚本・演出なんだろうか。。

「今さら、今さら気付いても遅いよ。」

 杉本にしても、意味のわからんことを言っているw杉本が陽子のことを嫌っていた理由っていうのは、彼女が八方美人だったからだっけ?確かに今までも杉本は陽子の「いい子」ちゃん癖を批判してきた経緯はあるけど、なんだか違和感を覚える。「遅い」っていうことは、もっと早くに気付いていれば、どうだったというんだろう…。このセリフの後で巧王に対して陽子を庇うようなセリフを言うけれど、なぜ陽子が「いい子」ちゃんを止めたら仲良くしようと思ったのかわからない。そもそも、杉本は友達と付き合うようなタイプではなく、一人で休み時間を過ごすような孤独なキャラクターだったように思う。ここらへんの、杉本が陽子に好意を持ち始める動機についても不明瞭だった。加えて、結局は杉本が陽子を殺すことなく、しかも海の妖魔が登場したことでご都合的にヒンマンも剥ぎ取られ、雁に到着することになる。どんだけだよw

「一度は帰りたくないと思った。でも、違う!私は怠惰だった。卑怯だった。ただ楽をしたくて、みんなと対立しなかっただけ。でも、もう一度帰れれば、帰ったら、前とは違った生き方ができる!努力するチャンスが与えられれば、もう一度やり直してみたいのよ!!」
「変わったね、中島さん…。」

 ずいぶんと前向きになって、しかも信念を以て行動するようになったと思う。とは言え、それを自らの言で吐露するのは微妙な感じ。杉本に関しても「変わったね。」とか言って、変わることのできた陽子に憧れを持つような言い方をしているところに違和感がある。陽子の変化に感化されて戦う気を失っているにも関わらず、巧王の命によって戦わざるを得ない状況になったことは仕方のないことだと思う。でも、まるで他人事のように「変わったね。」と言って陽子を客観的に分析しているほどの余裕を持っているのも変な気がする。

「なんで帰らなきゃいけないんですか。ここが私のいる場所なのに…。私にはここでやることがあるんだから、感謝してるくらい。」

 もとより杉本は十二国に自分の役割を与えて欲しがっていた。自分は選ばれた人間であり、陽子という悪い海客を倒すために呼び込まれた戦士であると思い込んでいた。なのに、陽子が「いい子」ちゃんキャラを卒業したというだけで軟化するのは解せないw杉本自身の内面の問題として役割を欲していたわけで、別に相手は陽子だろうと誰だろうと構わないし、相手がどんな状態だろうと関係なかったんじゃないのかなぁ。。杉本は自分が選ばれた人間であって、悪の海客を倒すことに意味を感じていた。っていうことは、相手が「いい子」だろうとなかろうと、それは関係ないように思う。どうも杉本のキャラにブレがあるように感じる。彼女は何がしたかったのかわからないし、制作側が彼女にどんな役割を与えたかったのかも曖昧になってきている。単に陽子の噛ませ犬として登場させ、陽子が成長したら用済みになったため、都合よく簡潔に物語の舞台から退場してもらおうとしているようにさえ見えるw

■強引な物語の誘導

 この陽子の成長に関しても、妙に説教臭いんだよねwまぁ、主人公だから仕方のないことだとしても、他のエピソードに関しても似たような説教臭さがプンプンするから辟易としてしまう。取ってつけたような話で説教っぽいことをやられるから、何も身に染み入ることはないし、空虚な感じが漂ってしまう。

「売り飛ばす人は、もっと親切な顔をしています。」

 さんざん陽子を警戒していた旅芸人一座の黄鉄も急に軟化したわけで、ここらへんの陽子を取り巻く人物の変化は杉本と同様に安易さが感じられる。しかも、その黄鉄の妹に関するエピソードが安っぽいったらなかったw陽子を助けようと考える動機だって不明瞭だった上に、陽子に身分証明となる札を渡す理由も深いんだか浅いんだかわからない中途半端なものだった。物語を進めるための整合性を保つための付け焼刃的な展開だったし、語られる内容は薄っぺらなものだった。加えて、陽子が今までの親切な人に裏切られた体験をもとに、黄鉄の顔を見て「売り飛ばす人ではない」と感じている部分もズレている気がする。陽子の成長とは、たとえ人が自分を裏切ったとしても、自分が相手を裏切ることがなければ自分が卑怯になることはないと考えるようになった点にある。大変に主体的な決意表明であるし、この考え方を延長するならば黄鉄が裏切ろうと陽子には関係がない。そういった経緯とちょっとした矛盾を含む表現だったように思う。単なるお世辞と考えれば構わないんだけどね…。

「したいことをしただけですから。」

 これも付け焼刃的なエピソードだった。猫の半獣をオリジナルキャラとして投入して、「やりたいことをやる」という陽子の成長後の姿勢を強調させるような役割を負わせていた。半獣の彼は巧国ではいいように行動することができず、自由に自分らしくあることのできる雁国へと旅をしているところだった。そんな猫が巧を抜け出してきた元役人にイジメられているところを陽子が助けることになるんだけど、それも陽子の「やりたいことをやった」ということになる。先の決意表明とは矛盾しない行動ではあるけれども、それを説教臭く盛り込んだことは微妙だと思う。あの「さぁて、これなるは…。」で始まる陽子の剣舞も冷めるよねw彼女はもっと不器用なキャラとして設定されていたと思う中で、あんな機転を利かせた対応をするっていうのは解せないwしかも、最後には猫の半獣が自分をイジメていた役人を守って死ぬという、飛躍もいいところな文脈無視のあてつけがましいオチを用意していたwそれに対して、「やりたいことをしただけ」って、どんだけだよwもはや自分の信じる「正しいこと」を自由に行動するっていう形式的な意味合いしか読み取れず、猫の半獣は物語の中でまったく機能していなかった。 
 この猫の半獣と言い、黄鉄と言い、急に宗旨替えをした杉本と言い、今回の話はご都合にも勝る安易な説教臭さが充満している。原作では陽子と楽俊の関係を軸に、陽子の成長を暗く地味に力強く描いていた。当たり前のこととしてアニメで同じことをやったら失敗するわけで、キャラクターも増やしてセリフのやり取りを多く打ち出せるように工夫したんだと思う。その結果、楽俊が陽子に説明していた天帝の話は玉葉が杉本にする場面に置き換えられ、巧国が傾きかけている現状を尚隆が陽子に伝える部分は巧国の兵士が不自然にも杉本に目の当たりにさせる場面になっていたし、巧国が不条理にも半獣や海客を認めていないことを猫の半獣に語らせるし、いろいろと原作では陽子中心に行われていた表現を、他のキャラクターに分散させたように思う。けれど、その分、ひとつひとつの脈絡が失われ、物語が薄っぺらになってしまった。陽子が海を渡って雁に行くだろうと推測する巧国の兵士についても、土地勘のない海客が雁国への最短ルートを選べるはずがないことを考慮していない。ここにも強引な持って行きようが感じられる。陽子が港への出入りを自由に行っているのだって、本来ならば衛士がわんさかいて不可能だったはず。海の妖魔が登場しただけで、すべての追っ手だけが殺されて、船は無事なままで、杉本からは不都合なヒンマンが剥ぎ取られた。どれもこれもご都合的で強引な物語の誘導を感じさせる。



 やっと次回からは雁国だよ。原作だったら暗くて辛い巧国と華やかで幸せな雁国の対比が鮮明に出ているけれど、アニメでは巧国での体験がそれほど暗いわけでもなかっただけに対比は薄らいでいる。別に原作と比較してどうこうすることの意味はないんだけど、あまりにもアニメ版が微妙かつ原作に寄りかかった表現を使っているだけに、どうしても比べたくなってしまうwアニメと小説は表現方法が違うんだから、内容が異なることは当然だと思う。アニメ化されて原作とは違うことをやるのは当然の帰結でしかない。そういった意味で、原作レイプっていう言葉は使いたくないんだけど、さすがにここまで原作を食いつぶすかのような内容になってしまっていることからすると、劣化としか言いようがないなぁ。。残念無念、また来週~。

テーマ:見たアニメの感想 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2010/06/15(火) 06:05:57|
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