土星蜥蜴の「筆のすさび」

日々雑感。 アニメ文化に関する気ままな評論・感想を書き連ねます。

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軟化するアニメーション

アニメなんてものは最初っから柔らかいものだって?w確かに「子供向け」の作品が多く作られてきたし、俗っぽい内容のものもあった。とは言え、広く受け入れられて文芸性の高い作品も多くあった。そんな中で、最近のアニメは中身のない空虚なものが目立つようになってきたと思う。そこに見える共通点と傾向を考えてみました。




 一つ前の時評でも書いたように、最近のアニメは説明セリフが多くなってきたように思う。しかも、単にSFの難しい設定を説明したり、複雑な世界観を説明したりするようなナレーション的な説明ではない。主にキャラクターの思っていることや悩みといった内面を自分から吐露するものであって、それはキャラクターが自ら自己規定をしているかのようだった。この点については、前回の「自己規定をするキャラクターと多用されるモノローグ」で詳しく述べた。
 この特徴は、作品が自らの表現していることを説明してしまうことから、受け手の解釈を制限するものだった。作中のキャラクターが自分で自分の気持ちを説明してくれちゃうから、世話はないw
 そのほか、解釈を放棄させるような側面も出てきている。
 特にライトノベルを原作とするアニメに多いような気もするけど、パターン化されたシチュエーションを用いることで、物語の文脈を欠いた状態に陥っていることがある。なぜそのような展開になったのかは作中の文脈だけでは理解することができないけれど、他の作品なんかで徐々に作り上げられてきた物語展開のパターンを下敷きにしているから何とか理解できるといった類の表現って言えばいいだろうか。いわゆる「フラグ」と呼ばれるものがそうだよねwこのキャラクターはこの後でこういう行動を取るっていうような展開の印が象徴的な言動によって示され、受け手もそれを想定した上で物語を読み解くっていう寸法な表現になる。したがって、作中だけでは物語の展開に飛躍があるように感じられることになる。ツンデレやメガネ巨乳といった記号的なキャラクター属性を用いるのと同様に、従来の作品が示してきたシチュエーションをパターン化して作中で再構築するような感じがする。要は、キャラクターで行われている記号化を、シナリオ面にも適応したようなものだと思う。具体的な作品名を挙げれば、『おまもりひまり』『おおかみかくし』『聖剣の刀鍛冶』『けんぷファー!』『とある魔術の禁書目録』(『とある科学の超電磁砲』は除く)『Angel Beats!』などがそうだった。どれも主人公の動機付けが不十分なまま物語が展開され、なぜそのようなシチュエーションへと展開されたのか文脈が示されることは皆無だったように思う。この中では動機も取り上げられない上は登場人物の内面描写などはお粗末なもので、主人公を取り巻く状況ばかりがめまぐるしく変化するのみとなる。解釈も何もできず、ただただシチュエーションを楽しむほかない。
 キャラクターが自分の気持ちを自分で説明してしまうのと合わせて、内面を描かずにシチュエーションばかりが取り上げられる現象には違和感を覚える。共通するのは、どちらも作品の内容を理解しようとする読解力を必要としないということなんだろうか。作中で演出意図を説明してくれれば「そうなんだ」と鵜呑みにするほかないし、文脈も必要としないシチュエーションの羅列には、そもそも心情の変化や機微といった意味合いを読み取る必要もない。ただ映像で示されたことに頷くしかなく、作品がどのようなことを表現しようとしているのか、受け手の主体的な解釈を求めるような内容になっていないということなんだろうと思う。
 大人アニメという呼び方が通るようになってから久しいけれど、一方では読解力を必要としない安直で軟化した作品作りへとシフトしている。制作側が視聴者をバカにしているだけなのか、それとも視聴者が本当に読解力を失ってきている故なのか…。誰もが見ることのできるアニメを目指して「公共性」を唱える作品が出る中で、あまりに理念のない「わかりやすさ」への偏執を感じてしまう。

テーマ:見たアニメの感想 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2010/06/16(水) 08:58:15|
  2. アニメ時評
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

コメント

お久しぶりです
時評読ませてもらいました
確かに二度見したくなるアニメは少なくなったと思います。
主人公の気持ちなどは
視聴者がもっと自由に考えを巡らせることができるような
演出をしてほしいです

ところで相談なのですが
僕は攻殻機動隊を見始めようと思ってます
どこから見るべきでしょうか?


  1. 2010/06/23(水) 00:13:51 |
  2. URL |
  3. 藤川 #-
  4. [ 編集 ]

藤川さん、お久しぶりです。

攻殻機動隊は世界観や設定をつかむのに時間がかかり、何度も見直した覚えがあります。そういった意味で、攻殻シリーズは二度見せざるを得ない作品かもしれませんw

《原作》士郎正宗 著
『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』(1991)
『攻殻機動隊2 MANMACHINE INTERFACE』(2001)
『攻殻機動隊1.5 HUMAN-ERROR PROCESSER』(2008)
士郎正宗さんって、未来からタイムスリップしてきた人なんでしょうか…。1991年って、まだワープロですら普及してなかった時代ですよね(^_^;)すべてのシリーズの根源にあたり、かつ1.5では最先端の部分も示されています。所狭しと余白に書き込まれた「設定」を読み込むために、一冊読むだけでずいぶんな時間がかかりましたwその設定が細かいこと、細かいこと…。

《劇場版》押井守 監督
A『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(1995)
B『イノセンス』(2004)
C『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊 2.0』(2008)
生命体の定義やらネット環境に接続した人間存在の変質やら、衒学的な内容の目立つ作品群。ウォシャウスキー兄弟の『マトリックス』がオマージュとして用いた場面もあって、それだけ映像表現においても影響力のある作品だったことが窺われます。Cの2.0はAのリニューアル版で、音や映像がキレイになって、ちょっとだけ設定が変わっている…けど、意味合いは大きく変わったような?やっぱり「ザ・攻殻」って言ったら、Aの『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』になるんだろうか…。

《TV版》神山健二 監督
ア『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』(2002)
イ『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』(2004)
ウ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX The Laughing Man』(2005)
エ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Individual Eleven』(2006)
オ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society』(2006)
神山ワールド全開!みたいな感じw原作の世界観を舞台にしながら、警察モノとして社会問題を描き出した作品群。それぞれ、アでは薬害問題を「笑い男事件」を通じて描き、イでは難民問題を「個別の11人事件」を通して描き、ウでは高齢化問題を扱っています。そうは言っても、そんなことよりも、どの作品にも共通して描かれているのは「STAND ALONE COMPLEX」と名付けられた一連のネット社会において発生した新たな現象であり、その指摘こそが神山監督ならではのオリジナルな問題意識の提示だったと思う。

《関連作品》
『神霊狩』(2007)
『RD潜脳調査室』(2008)
『東のエデン』(2009)
どれも微妙に攻殻の世界観とつながりを持たせている作品です。『神霊狩』と『東のエデン』は攻殻機動隊の前史としての位置付けが行われる作品になり、同時に『神霊狩』は『RD潜脳調査室』と合わせて、士郎正宗さんの『攻殻機動隊1.5 HUMAN-ERROR PROCESSER』で示された考え方を敷衍したような内容も含まれていました。

攻殻シリーズは原作を起点にして同じ世界観を共有するも、テーマや設定の異なったパラレルな関係にあります。そのため、特に原作と劇場版とTV版それぞれの時系列をごちゃごちゃにしない限り、どの順番で触れても問題はないように思います。これら三種は同じ登場人物や術語が登場するだけで、基本的には別物と考えて差し支えありません。
おおよそ、アニメのシリーズはA(C)⇒B、ア⇒イ⇒オの順序で見るのが穏当なところでしょうか。AとCはどちらを見ても大差ありませんが、やはり1995年に作られたという驚きを鑑みてAから見ることをお薦めします。TV版のウとエはそれぞれアとイのダイジェスト版となるため簡潔に内容を知ることができますが、極端に味気なくなってしまうためお薦めはしません。また、世界観を知るには『イノセンス』に付属している「INNOCENCE Before Viewing A Basic Guide」で説明があるので、『GHOST IN THE SHELL』を見た後に復習がてら見ると理解が早いように思います。

あくまで、ご参考まで。広大な攻殻シリーズの世界へようこそ…?
  1. 2010/06/23(水) 21:26:54 |
  2. URL |
  3. 土星蜥蜴 #-
  4. [ 編集 ]

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