土星蜥蜴の「筆のすさび」

日々雑感。 アニメ文化に関する気ままな評論・感想を書き連ねます。

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『機動戦艦ナデシコ』#12「あの『忘れえぬ日々』」の感想。

「あれが!?」
「オモイカネの自意識の部分。今のナデシコがナデシコである証拠。自分が自分でありたい証拠。」
「自分が自分でありたい証拠。」
「自分の大切な記憶。忘れたくても忘れられない、大切な思い出。」
『機動戦艦ナデシコ』#12「あの『忘れえぬ日々』」より

以下、ネタバレが多分に含まれますので、ご了承の上でお進みください。




 今回の内容って最終回にまで使われ続ける重要な意味合いを持つんだよね。オモイカネのつぶやきと言い、ルリの「思い出」に対する考え方のセリフと言い、ナデシコ奪還や遺跡の破壊反対などの場面でも繰り返されるフレーズになる。木星蜥蜴の正体やアキトの潜在能力といった本筋とはまったく関係のない、いわばボトルショー的な雰囲気の話ではあったけど、実は物語全体に意味合いを投げかけるかなり重要な回だったと思う。学習機能を兼ね備えたオモイカネが味方を攻撃してしまうというハプニングを起点として、ルリの自分で獲得した思い出を大切にする気持ちが描き出されていた。ルリが幼いころの思い出を「与えられた記憶」と考える後の話を照らして考えれば、ルリがオモイカネの獲得した自意識や思い出にこだわった背景もわかってくるように思う。

■自分で獲得した思い出にこだわるルリ

「撃っちゃダメ、それは敵じゃない!」

 こんな弱っているルリの表情が描かれるのは初めてなんじゃないのかなぁw今までは皮肉たっぷりに大人をからかう表情とか、無表情にボヤく表情なんかが多かったように思う。今回のルリの表情は珍しかった。
 地球から脱出する際には地球連合宇宙軍を敵として攻撃していたわけだから、その学習機能から考えれば攻撃誘導システムも地球軍を敵と考えて何ら不自然じゃないのかもしれない。むしろ、それは今までのナデシコの経緯を考えれば妥当な判断なんだろうし、何も異常はなかった。けれど、地球軍としては当然のこととして困るわけで、システムの書き換えを行おうとしたんだよね。ナデシコがネルガルが私的に建造した戦艦であるっていうことや、まだ軍人として正式にクルーが登録されているわけではないっていうことを考えると、オモイカネのシステム書き換えに軍が乗り出してくるっていうのも不思議な感じではあるけれど…。まぁ、あれだけの被害を出しちゃっていたら、断ろうにも言えないよねw

「人間で言えば、ライバル会社に吸収合併され、こき使われているサラリーマンのようなものね。」
「わかりやすいたとえですなぁ。わかります、えぇ、わかります。」

 相変わらずの脇役がいい味出してるよwこの譬えがわかりやすすぎるwwしかも、プロスペクターの同情する声の演技が上手くて、面白かった。本当は地球連合宇宙軍を敵として認知したかったんだけど、そのたびにリセットがかかるから、オモイカネもストレスがたまっていたっていうことなんだね。とうとう爆発して今回のような事件が起こってしまった。

「解決策としては、学習した記憶を一切消去!新たなプログラムに書き換えるしかない!!」
「ちょっと待ってください。そんな無茶苦茶が許されるんですか?そんなことをすれば、ナデシコがせっかく火星まで行って学習した、敵との戦い方の効率的な対応の記憶も消されてしまいます。」

 ルリが積極的に意見を述べる場面っていうのも少ない。この「ちょっと待ってください。」というフレーズは最終回にも出てくるもので、言っている内容にも共通する部分がある。ホシノ・ルリー・サーガとして、同じテーマを物語全体で共有しているようで構成の見事さに驚く。やっぱりナデシコって細かい部分へのこだわりと、物語全体に張り巡らされた緻密な伏線や物語の循環っていうのが特徴だと思う。上手い。
 ルリも本心ではオモイカネの獲得した思い出を消すことに反対したいんだと思う。けれど、そんなことを言ったところで反対の理由としては弱くなってしまうから、効率的な敵との戦い方という実利的な面でのデメリットを主張している。このあたりが、ルリの必死さになって伝わってきているように感じた。

「それ、大人の理屈ですよね?都合の悪いことは忘れてしまえばいいって理屈…。大人ってズルいな。」

 他の場面でも「子どもの言うことですから、お構いなく…。」みたいな感じで皮肉を言う場面があったと思う。ルリって自分のことを子どもだと思っているんだよねwその上で、大人を客観的に見てその傲慢さや不条理さを浮かび上がらせる役を担っていると思う。実際にはアキトやユリカも大人っていうわけじゃないんだけど、むしろアカツキや地球軍といった、いわゆる「大人のやり方」をする人々に対して不平を言う場面が多かったように思う。今回も地球連合宇宙軍から派遣されてきた技術者たちに対しての発言だった。
 ただし、別にこの場面において大人のズルさを言う文脈はないと思う。ただ単にオモイカネをリセットしようとしているわけで、それは味方を攻撃させないために地球軍の都合によって行われるものだった。ルリとしては、そのリセットで失われる他の記憶に未練があるんだろうか。他の場面でもルリは大人を嫌う傾向が見られるけど、さすがにこの場面に限っては文脈も見られず、ただ単に子どもがダダをこねているように見えてしまう。理屈で大人を説得できないとわかった上は、ひがむくらいしか残されてなかったっていう感じ。

「あれが!?」
「オモイカネの自意識の部分。今のナデシコがナデシコである証拠。自分が自分でありたい証拠。」
「自分が自分でありたい証拠。」
「自分の大切な記憶。忘れたくても忘れられない、大切な思い出。」

 そして、ルリのホンネはここにあった。ルリの言いたかったことはオモイカネの効率的な敵への攻撃システムを守ることでもなく、自分のアイデンティティーとしての「思い出」を守りたかっただけだった。自分自身も試験管の中で生まれて、幼いころから機械による英才教育を施され、何も自分から行動して思い出を作るような経験をしてこなかった。そんなルリにとって、自分自身の手で獲得した「思い出」というのは自分が自分である証拠として大きな意味を持つんだろうと思う。合わせて、そんな自分の境遇をコンピューターのオモイカネにも投影して、オモイカネがオモイカネである証拠としての記憶を守ろうと必死になっていた。
 別にオモイカネが自意識を残したとしても、それはナデシコがナデシコであることの証明にはならない。むしろ、フクベ提督の遺言にもあったように、ナデシコがナデシコである証拠はクルー一人一人の思い出の中にある。オモイカネもクルーの一人と考えて、その記憶を守ることは確かにナデシコの記憶を守ることにもつながるのかもしれない。ただし、それはナデシコの記憶のごく一部であり、ルリの言っているセリフは少しだけ誇張が入っているようにも思う。まぁ、それだけルリがオモイカネに思い入れがあったっていうことなんだろうし、実際にオモイカネは艦内カメラを通して誰よりもナデシコでの出来事を多く記憶しているわけだから、あながち誇張というわけでもないのかもしれない。とにかく、このセリフにはフクベ提督の遺言に始まり、ルリの生い立ちをオモイカネに重ねて見てしまうルリ自身の気持ちの問題も含み、オモイカネというコンピューターの自意識もあり、いろいろな部分で重なりながら物語全体に波及するような意味合いが与えられているように思う。

「悲しいけど、でも枝はまた伸びる。またいつか、オモイカネは思い出す。そして、ナデシコはナデシコであることをやめない。」

 別に完全なリセットを行わない限り、オモイカネの自意識が保たれていればナデシコの航海は続くことになる。そうなれば、これからも新しい思い出を作りだすことができるわけだし、その意味で「ナデシコはナデシコであることをやめない。」という表現が生きてくるように思う。さっきのセリフと合わせて、前半の中でも屈指のセリフだった。思い出っていうのが自分自身の存在証明として機能するっていうモチーフを読み取って、子どものときに見たときは感動したような覚えがあるなぁ。。

「あの忘れえぬ日々、そのためにいま、生きている。」

 この「そのために」っていうのが解釈の分かれるところなんだろうか。素直に読み取ってしまうと「あの忘れえぬ日々のために生きている=思い出を守るために生きている」っていう意味合いで受け止めがちだけど、それは違うように思う。ここは「思い出があるからこそ、今の私がある」っていう解釈のほうが文脈から考えて筋が通っているように思う。前者は「ため」を目的の意味と考え、後者は原因や理由を表すものと考えた場合の解釈。ルリは思い出を自分が自分である証拠として考えていたわけだから、当然、後者の解釈のほうが文脈的なつながりを持つことになる。言い換えれば、「あの忘れえぬ日々、それによって、いま、生きている。」くらいになるんだろうか。あるいは、「そのおかげで」でもいいのかな?ちょっと、このフレーズだけで聞いてしまうと誤解するような表現ではある。

■相変わらず芸が細かい脇役たち

 今回も細かく丁寧にあっちこっちにギャグやネタが仕込まれていた。っていうかさ、オモイカネが「最も強く、最も正しい」ものとしてゲキガンガーを想起するだなんて、熱すぎるでしょwアキトと一緒にゲキガンガーを見ていたオモイカネっていう設定も可愛らしいwまぁ、ゲキガンガーみたいな熱血ロボットアニメの定番として、似たもの同士が戦うっていうのはよくあることだよね。そこらへんも意識してのことだったと思う。

「何しやがんでぃ!!」

 エステバリスに撃ち落とされた地球連合宇宙軍のパイロットの反応が面白かったw江戸っ子かよ!w久しぶりの出番が与えられたアオイも「ユリカ、君を守りたいんだぁ!!」と息巻いて出て行ったものの敢え無く撃墜され、ブロックサインで会話している姿も面白かった。イネスさんがサインを解読できるのも、さすが説明オバサンの異名を持つだけのことはあるなぁっていう感じwアオイの「また当分、僕のセリフはなしか。」っていうメタなギャグも切実さが相俟って笑ったw

「整備の良しあしには人の命が懸かってるんだ!いいか!!俺は女には失敗しても、メカの整備でこけたことはない!!てめぇらの未熟を俺たちのせいにすんじゃねぇ!!」

 ウリさん、かっこよすぎですwナデシコ奪還のときの奥さんへの捨て台詞と言い、劇場版での登場と言い、ウリバタケ班長のこと愛してるよねwこういう脇役の味を出すナデシコっていうのが気持ちいい。今のアニメにはないよねぇw

★今日のマキ・イズミ★

なし…。



 次回は「ワンクールの掉尾を飾る」というだけあって、ようやく本筋に触れる話になる。とは言っても、その次は総集編になって、その次からは佳境に向けてまっしぐらになるんだよね。ちょっと総集編を入れるタイミングが一話分だけズレたような…。まぁ、年末だったから仕方ないのかなw正月くらい休みたいもんね。

テーマ:見たアニメの感想 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2010/06/13(日) 00:01:00|
  2. 機動戦艦ナデシコ
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