土星蜥蜴の「筆のすさび」

日々雑感。 アニメ文化に関する気ままな評論・感想を書き連ねます。

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『さらい屋 五葉』#12「もうふらふらですよ」の感想。

「何か見えるのかい?この闇の中で、何が見える!?」
「何も見えねぇから、見ている。」
『さらい屋 五葉』#12「もうふらふらですよ」より

以下、ネタバレが多分に含まれますので、ご了承の上でお進みください。




 安心の最終回っていう感じで、無難な着地だったと思う。全編を通して細かい工夫を下地にした安定感のある仕上がりを見せていたと思うし、弥一の抱える闇や政之助の成長を中心にして内面描写も巧く表現されていた。ちょっと小さくまとまり過ぎた感はあるけど、作品としての一貫性もあって完成度は高かったように思う。2クール作品で考えていれば、もう少し丁寧な表現もできて良かったなぁ。。せっかく深みのある世界観が作られていたんだから、それを生かして物語を続けてもいいように思う。政之助も「最終回なのに、出番が少ないでござる。」って感じだったし、2期があれば期待だねw

■誠之進の呪縛から解放された弥一

「お前さんにも、過去があるだろ?ときには、その思い出を肴に酒を飲みたいとは思わないか?」
「語るほどの過去は持っちゃいねぇから…。」

 弥一にとって過去の話は思い出したくないものだっていうことがわかる。過去なんか振り切って毎日を楽しみたいところだけど、どうにも過去を忘れることができない。なんだけど、その過去は決して思い出したくなるような楽しいものでもない。前回の話でも加納家の息子に自分の過去をあてがって、まるで自分と同じ境遇の仲間を作ろうとしているかの如き異常な執着を見せていた。何にしても、物語が進むに従って弥一の過去と因縁のあるストーリーが展開され、弥一の抱える闇の部分がどんどん深まっていった。

「何か見えるのかい?この闇の中で、何が見える!?」
「何も見えねぇから、見ている。」

 このセリフが妙に暗示的で気になるw意味はわかんないんだけどね…。弥一の見ている闇っていうのが、自身の心の中を指しているように感じてしまう。あるいは、社会の闇のことを指して言っているのだろうか。何も見えないっていう空虚な感じが、弥一というキャラクターを象徴しているかのようだった。

「この話を持ちかけて来たのは、弥一って名だったぞ。」

 回想で弥一が攫われてきた場面が繰り返されるのも、それだけ弥一が信頼していた本物の弥一の裏切りにショックを受けたっていうことを印象付けるためだったんだろうと思う。現に、実は弥一などという使用人の名前を聞いていなかったという事実を聞かされて、弥一は茫然自失の表情を浮かべていた。弥一にとって本物の弥一は三枝家の中でも唯一と言っていいくらいの心を通わせた人物だったわけだし、そんな人物が自分を家から追い出すために動いたとあっては裏切り感も尋常ではなかったはず。そのときの裏切りから、あるいは自分を捨てた家の非情さから、世の中に失望を感じたのかもしれない。しかし、その失望は虚構だった。本物の弥一は裏切っていなかったし、八木の話によれば井戸に身投げしたとさえ弥一は聞いた。弥一が茫然自失の表情を浮かべたというのも、それまで悲嘆して生きてきた人生が、実はそんな必要もなかったということがわかったからなんだろうか。それほど世の中が悪いもんじゃないとわかったと同時に、それまでの人生の空虚さが弥一を襲った瞬間だったと思う。

「だが、そう言わねぇと、おめぇは殺されてた。」

 さらには、この優しさも追い打ちをかける感じだよね…。確かに、もしも嘘をつかれていなければ、誠之進は実家に戻って真意をただそうとしてしまい、それは殺さなければならないという口実を与えることになる。ここで誠之進は嘘を聞いて気力を失ったからこそ、弥一としてその後の人生を手に入れることができた。ずいぶん皮肉な感じがする。結局は本物の弥一も誠之進のために殺されてしまったわけだし、そんな本物の弥一を裏切った人間として考えてきた今の弥一の半生っていうのは、彼を後ろ暗い気持ちにさせるには十分な要素だったろうと思う。今までの自分はなんだったんだっていう空虚感がひしひしと伝わってきた。
 そうして、ようやく弥一は本物の弥一の墓参りをすることができ、墓前でくず折れて泣いていた。あの突っ伏して声にならに声で泣く場面は良かったなぁ。。惜しむらくは、あっという間に明るくなってしまったことだろうか。できることなら、もう少し時間経過の表現を丁寧にやって欲しかった。せっかくの弥一の泣きに対する余韻が失われてしまって、もったいなかった。
 つまるところ、事の真相を知った弥一にとって、今まで心の奥底でずっと渦を巻いていた過去の記憶は何も意味をなさなくなった。本物の弥一の裏切りは嘘だったし、それを信じなければ生きられなかったことも本当だし、なぜ世の中に対して悲嘆していたのか理由は立ち消えになり、一方では悲嘆があったからこそ生きながらえた今の自分もいることになる。虚無感がのしかかってくる中で、いたづらに生きながらえている分だけ何をしていいのやらわからないっていう感じなんだろうか。本来ならば新しく「弥一」という名前になったところで生まれ変わった生き方をするべきだったんだろうけど、弥一はいつまでも誠之進であったときの記憶に縛られていた。そのために被った今回の矛盾と虚無感なのかな…。さて、これから弥一は気持ちも新たに生きていくっていう感じなんだろうけど、そこから先は描かれなかった。

■中途半端に感じた五葉

 弥一が三枝家を追い出された誠之進だっていう描写は初回からあったし、次第にその過去も明るみになりつつ物語が進行していたし、今回のオチっていうのは予想の範囲内っていう感じだった。巧いこと全体の筋書きが構成されていたように思うけど、ちょっと小さくまとまったような気がする。
 弥一の過去に対する結着や、政之助の成長っていうのは、ある程度は描かれていた。初回の弥一の飄々とした雰囲気から一転して、最後のほうの闇に囲まれた弥一っていうのはコントラストになっていて鮮やかだったように思う。最後の3話くらいで見られた政之助の頼りがいのある行動っていうのは目覚ましいものだったw
 欲を言えば、もう少し社会の闇の部分にスポットをあてても良かったように思う。弥一の個人的な内面の結着や政之助の成長を描くのはいいんだけど、そんな弥一や政之助のような存在を生み出している社会そのものの悪といった問題が扱われてもいいような内容だった。まぁ、作品の主旨が弥一や政之助の人間的な部分でのドラマを中心に描き出しているわけだから、そういった社会的な面にまで手を出すのは強欲なのかな?w

「なぁ、イチは五葉をどうしたいんだ?」

 結局、弥一自身が五葉をやろうと思った動機や目的は語られなかった。確かに梅や松の金銭的な事情をきっかけとはしていたけれど、そもそも弥一の本質的な部分での動機は不明なままとなっている。加納家の息子を誘拐したときの弥一の行動がヒントになるんだろうけど、あれだけだと少しピンとこない。

「あっしらに、手伝ってくれるか…、と。らしくねぇ!」

 さらには、弥一が五葉の活動を継続させる理由もわからない。梅がお金を貯める必要もなくなったわけで、政之助も立派に独り立ちしそうな感じだし、以前のように五人が五人で五葉を続ける理由を持っているわけではなくなった。しかも、過去との結着をつけた弥一にとって、加納家の息子に対したときのような動機付けを今後も持ち続けるとは考えにくい。しかも、「手伝ってくれるか?」とか言って、松吉たちの意向を聞いてから活動しようっていう人間関係の作り方もわからない。それまでの弥一は自分の楽しいと思うことをやっていただけで、他のメンバーもそれぞれに動機があったから個々別々に五葉に関わっていたようなものだった。なのに、お願いして関わってもらうような関係になるとは…。なぜ弥一が五葉を続けようと思ったのかわからないし、わざわざ仲間にお願いしてまで続けようっていうことも、なおさらわからない。やっぱり人ってのは信じられるんだと気付いたっていうことにしたいの?w確かに本物の弥一が裏切ってなかったということを知ったのはあるんだろうけど…。



 この作品は見ているだけで雰囲気に酔えた。あの空気感を味わうだけでも楽しかった。やっぱり時代劇っていいなぁって思わせるアニメってのも珍しいし、そういう意味では新しかったと思う。考えてみれば、ここまで厚みのある時代劇の世界観を打ち出したのって珍しいんじゃないのかな?っていうか、実写でやればいいんじゃないのかな!?っていうか、アニメでやる必要あったのかな!??wノイタミナの扱うアニメって、内容が充実していて見ごたえのある作品が多いんだけど、だいぶアニメ「らしさ」を見失っているように思う。これはこれでフロンティアとしていいんだろうけど、なんだか方向性が違う気もするなぁ。。

テーマ:さらい屋五葉 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2010/07/05(月) 04:57:41|
  2. さらい屋 五葉
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