土星蜥蜴の「筆のすさび」

日々雑感。 アニメ文化に関する気ままな評論・感想を書き連ねます。

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2010年-夏-(9月末終了)新作アニメの感想と評価

 すっかりご無沙汰してしまいました。ついに一回も更新しない月を出してしまった…。とは言え、これから更新ができない状況になるかもしれない。っていうか、しばらくブログの更新をやらずにいると、怠惰な豚である自分としては「更新やらなくっていいやぁ~」という横着な考えが芽吹いてしまう。。
 ってことで、「まとめて感想を書けばいいや」という横着な発想のもと、前回シーズンに見た新作アニメの感想を列挙することにしました。ちなみに、いつもお誘いを頂いているピッコロ様の企画に連動できるよう、評価の形式などは「今期終了アニメの評価をしてみないかい?」に提示されているものに準拠しています。
 いつもながら長々としたものになりますが、最後までお付き合いのほどを願っておきます。

企画元URL:「ゲームやアニメについてぼそぼそと語る人
http://blog.livedoor.jp/koubow20053/archives/51531933.html

以下、ネタバレが多分に含まれますので、ご了承の上でお進みください。



(目次)
1、評価の観点と方法
2、個々の作品の評価と点数
 学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD
 世紀末オカルト学院
 けいおん!!
 RAINBOW-二舎六房の七人-
 ストライクウィッチーズⅡ
 オオカミさんと七人の仲間たち
 HEROMAN
 黒執事Ⅱ
 会長はメイド様!
 祝福のカンパネラ
 みつどもえ
 生徒会役員共
 あそびにいくヨ!
 GIANT KILLING
3、ベスト賞について
4、総評



1、評価の観点と方法

 評価の観点は全部で6つあり、それぞれ5点満点で集計するようです。従って、最高点は30点。その基準は以下の通りです。以下、「今期終了アニメの評価をしてみないかい?」から評価の基準を引用します。

★ストーリー・・・脚本、設定も含めて、破綻がないか。テーマ性を貫けていたか。そしてオチがしっかりしていたか等。
★キャラクター性・・・キャラクターの魅力。キャラクターと声優の声のイメージが合っているか等。
★画・・・キャラクターデザインに忠実か。作画の破綻、崩壊がないか。よく動いてるか等。
★演出・・・声優の演技。盛り上がりを作れているか。BGMや挿入歌が効果的に使われているか。カメラワークや構図の工夫。各話の引き等。
★音楽・・・OP・EDが作品の雰囲気に合っているか。BGMや挿入歌の評価等。
★総合的な評価・・・この作品を面白いと思ったか、また満足度。他人に薦められる作品か等。

5点:とても良い
4点:良い
3点:普通(及第点)
2点:惜しい。何かが足りないレベル
1点:悪い
0点:かなり悪い

 相変わらず、作画についてはわかりません。。ので、単なる印象で気軽に点数を付けてみます。
 ちなみに、評価は今まで見たことのあるアニメ作品と比べた上での点数となっています。決して今期だけのアニメを対象にして、相対的に判断しているわけではありません。(今までに見たことのあるアニメは「ひとことアニメ便覧」を参照のこと。)従って、今期だけでなく少し広い範囲の中での評価となりますので、結果的に点数は全体的に低めになってます。
 また、★の数や点数によって作品を簡易に評価することに抵抗がないわけではありません。そんなことよりも、具体的な感想の本文によって作品の内容について批評できればと思っています。ツンデレやフラグなど記号的な文化が横行するご時世において、少しでもその流れに反抗できればいいなぁ…。
 それでは、張り切って行ってみましょう☆



2、個々の作品の評価と点数

■学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD=総得点:14点
ストーリー★
キャラクター性★★
画★★★★
演出★★★
音楽★★
総合的な評価★★

 まさにエログロだった!作品のコンセプトがエログロやミリタリーである以上、それ以外の部分に何かを求めても筋違いってもんなんだろうか。確かにヒロインたちのエロさっていうのは多く描写があったし、ゾンビたちを薙ぎ倒していくグロさは際立っていた。何より、さすがマッドハウスと言うべきアクションシーンが冴えていたことも作品を特徴付ける大きな要素になっていると思う。しかし、全体のストーリーや作品世界には納得のできない部分も多かったし、個別の表現を見ても脈絡のある文藝性の高いものはなかったように感じた。したがって、場面ごとの単発的なエログロのみに終始した作品だったという印象が強い。
 っていうか、あのラストは何だったの?wまさしく打ち切り感バリバリの終わり方だったけど、あれは予定されていたことなんだろうか。結局は主人公の小室とヒロイン三人組(先生はヒロインに入るんだろうか…w)のあれやこれやも中途半端なまま終わってしまったし、そもそも宮本麗が元カレから小室に乗り換えた動機付けも不十分なままだったし、狂信的な生徒を従えていた紫藤先生に関しても設定が十全に生かされることなく不完全燃焼気味だったし、そういった内面的な変化に関わる描写はほとんどなかった。何も結着をつけないまま終わってしまったようにしか見えない。元カレがゾンビ化してしまったために自ら殺したという経緯が後半で生きるかと期待してはいたけれど、そんなことなかったかのように物語は進んでいた。物語の文脈など意識されず、ただエログロだったように思う。この作品の意義っていうのは一義に場面ごとのエログロを楽しむことにあるんだろうか。一過性のエンターテイメントっていう感じで、ドラマ性がなかった。
 一方、物語世界の設定に関しても奥行きが感じられなかったように思う。第一、パニックを描いているにしては静か過ぎる。なぜ世界中で同時多発的にゾンビ化の現象が起こっているのかといった説明は行われなかったし、非常事態に対する政府や自衛隊の対応もほとんど見られず、発生地域の隔離という対応が描かれながらも世界各地で発生してしまっていることの矛盾は触れられず、ただただ主人公一行に関わる物語だけが切り取られていた。すべての設定はエログロを成立させるための方便としてしか機能していないように感じるし、そういった細かな矛盾や不備はエログロを描写するには必要ないものとして切り捨てられたと見たほうがいいんだろうか。いくらフィクションだからと言っても、現実との地続き感を失ってしまっては作品世界が浮足立ってしまう。
 結局は「エログロ」という記号的な要素を引き立てることが第一にあり、それを成立させるために様々なガジェットやキャラクターを用意したという感じがする。そのためか、それぞれのキャラクターもツンデレ・巨乳・ツインテール・天然などと言った記号的なものになり、シナリオも文脈や動機付けを持たない断章的ものになっていたように思う。そこにはパンチラや乳揺れをするビッチな「ヒロイン」がいるだけで、別に「宮本麗」個人である必要はなかった。それに、それぞれのキャラクターに付与された生い立ちも取って付けたような経緯にしか感じられなかった。
 打ち切り感バリバリのラスト、記号的なキャラクター、奥行きのない物語世界、文脈を持たないシナリオ、どれを取っても、作品は「エログロ」だけに向かってひた走っていたように思う。とにかく、この作品はエログロだった。

■世紀末オカルト学院=総得点:18点
ストーリー★★★
キャラクター性★★★
画★★★
演出★★★
音楽★★★
総合的な評価★★★

 男だって空から降ってくる。あの内田文明の登場は印象的だった。空から降ってくるのは女の子と相場が決まっている中で、見事な発想の転換だったと思う。シナリオに関しても、いわゆる「超展開」と呼ぶべき顛末を迎え、ドタバタ感たっぷりでラブコメを成立させていた。オカルトと銘打ってはいるものの、つまるところは神代マヤと内田文明のラブストーリーをオカルト風味で送ったまでのことであって、何もオカルトがメインで描かれるわけではなかったのだろうか。脇役を固めるキャラクターも単なる紋切り型にはしないまでも、しっかりと存在感のあるものだったように思う。なんと言っても、美風がラスボスであるという明らかなメッセージが序盤から発せられている中で、いつ正体を現すのかといったスリルを味わえた。結果として期待を裏切るどころか、物の見事に魔法少女的な展開のもとに美風は典型的な悪役キャラとして変身を遂げ、変身前と後の美風のキャラの鮮やかなコントラストが冴えわたっていたと思う。そんな甘い美風のキャラクターとマヤのツンデレなキャラクターの対比も良かった。マヤと美風、未来と過去、変身前と変身後、白魔法と黒魔法、全体として物語の仕組みがわかりやすかった。内田文明とマヤと美風という三角関係も、ベタで安定感のあるものだった。
 とは言いつつも、少し最終回のオチに関しては不満がある。内田文明が異空間からの侵略を簡単に打ち払ってしまったのは、あまりにもチート過ぎるwマヤが内田に帰らないでいて欲しいという、日頃の態度とは裏腹な感情を表に出したことについても、もう少し丁寧に描いて欲しかった。ラスト二話くらいの超展開に引きずられたのか不明だけれども、あのラストはあまりにも雑駁な感じがした。少しご都合が過ぎたように思う。
 タイムパラドックスに対する解釈も納得できない部分がある。量子論的な多元宇宙的解釈に拠って時空間転移を考えるのではなく、旧来のタイムパラドックスを内在させる単一の系列に収まる時空間解釈を採用したことはSFとして問題はないと思う。しかし、過去の一点を改変することによって、未来が変わるという設定は時代遅れのように思えてならない。内田文明を過去に送り込んだのは神代純一郎だけど、結果的にその神代純一郎が異空間から侵略を受けていない世界に存在することになってしまっては、そもそも内田文明を過去に送り込む動機を獲得しないことになってしまう。では、あのラストの場面で楽しげな生活を送っている神代純一郎は誰なのか。異空間から侵略された場合の世界をパラレルワールドとして、そこから侵略を受けていない世界へと転移したのか。すでにパラドックスに対する解釈を放棄しているとは言え、どうにも都合よく時空転位の設定を利用したように思えてしまう。まぁ、伝統的な『ドラえもん』的タイムスリップと同じ考え方を用いたって言えばいいんだろうけど、『ノエイン~もうひとりの君へ~』とか『ゼーガペイン』といった作品が出されている中では後退したようにも思える。『夏のあらし!』で議論されていた「冷蔵庫の中の牛乳」が思い起こされる。
 要は、『ドラえもん』的な時空間転移の考え方にしても、わかりやすい対比構造にしても、ベタな三角関係やドタバタなラブコメ要素にしても、とにかくベタでわかりやすい作品だったように感じた。普通に面白い作品だとは思うけど、凡庸に陥ってしまった嫌いがないわけではない。
 当初はアニメノチカラ枠ということで色眼鏡で見ていたところがあった。だって、『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』や『閃光のナイトレイド』に続く第三弾だよ?ほぼ確実に滑るものと思っていたら、予想外に良かったw三度目の正直って、本当にあるんだね…。

■けいおん!!=総得点:26点
ストーリー★★★★
キャラクター性★★★★
画★★★★★
演出★★★★★
音楽★★★★
総合的な評価★★★★

 何においても良かった。勉強させて頂きました。。四人組の卒業という別れを下敷きにしながら、最後の最後まで誰も別れを口にしなかったのがいじらしい。卒業が間近に迫る中で、それでも楽しく日々を過ごす五人の姿は極度に青春真っ盛りの姿として映っていた。誰も別れを語らない中で、かえって語らないことの不自然さが多くを物語っていたように思う。ギャグアニメとしてはカットの対象となるはずであろう、ただ部室にたたずむ梓の姿や階段を駆け上がる唯の何気ない描写が、別れを予感させる無言の表現として効果的に機能していた。そういう意味において、この作品は「行間のあるアニメ」と言うことができるかもしれない。キャラクターの映っていない場面や無言の場面においても、何かしらの意味合いを表現できている作品だったと思う。卒業という別れを前提とした26話全体に及ぶ壮大な構成を見て取ることができた点が良かった。事あるごとに繰り返される夕焼けの描写も、見ている側に無意識ながら別れを連想させる効果を持たせていたように思う。キャラクターそれぞれの表情や仕草、背景、画面構成、セリフ、シナリオ、どれを取っても丁寧で意図的で周到なものだった。番外編の最終話で卒業写真を撮影するときに律が唯の肩に手を置いていた悪戯がバレたけど、こういう伏線があちこちに張り巡らされていたのも物語としての文脈のあることを裏付けていると思う。梓が四人組の演奏を「あんまり上手くないですね。」と涙ながらに言うのも、典故表現として文藝性のあるセリフだった。演出も脚本も、どの場面を取っても手抜かりのない感じがした。
 それぞれのキャラクターの「らしさ」が独立して互いに作用し始めていたのも好印象だった。唯だったからこそ先生への色紙をお腹に隠して卒業式に臨んだわけだし、梓だからこそ額の絆創膏を恥ずかしがっていたし、紬だからこそ先頭を歩きながらも後ろ歩きで他の三人の会話を微笑ましく聞いていたし、澪だからこそ先生の部屋へ入ることを躊躇っていたし、律だからこそ卒業写真の悪戯も許された。彼女たちは一見すれば『らき☆すた』で印象付けられた紋切り型のキャラクターを踏襲しているかのようにも見られるけれども、彼女たちは彼女たちでなければならない理由がしっかりと与えられていた。そういったキャラクターの理由付けが本当に何気ない動作で表現されていることが良かった。モブキャラに至るまで気配りが行き届いていたのも驚きだった。
 この手の日常を描いた作品としては『らき☆すた』や『みなみけ』といった名前が挙げられるけれども、これらの系譜の中では明らかに一線を画す。徹底して彼女たちの日常をリアルに描くけれど、そのためには、どういった動作が「らしさ」を演出するのかといった監察と写生が必要になると思う。そういった緻密で丁寧で着実な積み上げの結果が『けいおん!!』だった。単に萌えを演出するのではなく、しっかりとしたドラマがあった。さわ子先生が名簿を手で撫でて、誰もいない教室で机を撫でて、自宅で卒業アルバムの写真を撫でて、そういった細やかな表現によって内面がにじみ出て描写されている。丁寧な仕事を見せてもらったような感じがして気持ちがいい。何でもセリフで語ることによって表現内容を説明してしまう作品が多くある中、こういった表情や仕草や間によって表現しようとする作品が人気を出すことは正直にうれしい。やはり第一期は萌えに突出するような気配があったものの、第二期に及んで表現性の高い作品に化けた。

■RAINBOW-二舎六房の七人-=総得点:13点
ストーリー★★
キャラクター性★★
画★★★
演出★★
音楽★★
総合的な評価★★

 ストーリーが進むにつれて、すべての内容が紋切り型に見えてきてしまうところが残念だった。結局は、世の中の不条理に立ち向かう主人公たちの姿が美談めいて描かれ、彼らは青春をやっていて、仲間という絆によって苦難を乗り越えていく感じになってしまう。後半になるにつれて同じパターンを繰り返し見せられているように感じてしまい、物語に変わり映えがしなかった。時代に翻弄されながらも力強く自分の生き方を貫く男の姿が描かれていたのは良かったけれど、それも看守の石原に関わる部分で語り尽くされた感さえある。キャラクターごとに個別のストーリー展開が用意されていたものの、描かれる内容は趣向を一にするものだった。
 押し付けられる不条理から脱出して、彼らの自由な生活を目指すことが作品の本分だったように思う。しかし、つまるところ、彼らは自由になっていないように思う。確かに不条理や不遇からは抜け出すことができたのかもしれないが、仲間という絆からは解放されていない。美談として語られるために仲間の絆の良さばかりが強調されるが、その一方では仲間という所属意識によって一定の束縛が彼らに与えられていることには無自覚となっている。彼らに課せられた不条理の背景に何があるのかといった社会的な問題にはまったく触れられない中で、より一層、単に美談として仲間の絆をまとめあげたいという恣意性が感じられてならない。個人的な嗜好によるのかもしれないけれど、物語全体としても個々の表現としても取り立てて印象に残ったものはなかった。
 まるで『水戸黄門』のような時代劇だったと言ってもいいかもしれない。御老公の話も同じパターンの繰り返しを何十年もやっている。それはそれでいいのかもしれないけれど、この作品は別にアニメでやるような内容ではなかったように思う。実験的な作品ではあったけれど、あまり馴染まなかった。美談を美談として語る中で、それに終止してしまったことが残念なところだった。もう少し社会的な側面から問題意識を持つか、あるいは、個々のドラマを工夫して演出することができれば違ったのかもしれない。

■ストライクウィッチーズⅡ=総得点:13点
ストーリー★
キャラクター性★★
画★★★
演出★★★
音楽★★
総合的な評価★★

 なんだか、なんにもなかったw第一期では宮藤芳佳の成長と活躍を描いた王道的な展開が最後に用意されていたけれど、第二期では別に何もなかった。せいぜい、ネウロイを尻で挿んで倒したくらいだったと思う。特にこれと言って印象に残るようなものはなかった。新たに物語を展開させた第二期というよりも、むしろ第一期のオマケ的な感じで受け止めるとちょうどいいのかもしれない。ウィッチーズたちの内面の揺れ動きがあまり見られなかった。こうなってくると、「カワイイデスネー」とか「ネウロイタオセテヨカター」くらいの棒読み的な感想しか持てない。

■オオカミさんと七人の仲間たち=総得点:9点
ストーリー★
キャラクター性★★
画★★
演出★
音楽★★
総合的な評価★

 お約束や定番キャラクターなど、手垢の付いた表現ばかりが目立ってしまった。それが作品のコンセプトだったのかもしれないけれど、だとしたら、別にこの作品を見る必要性はなくなってしまう。惰性で作ったような作品だったとは言いすぎかもしれないけれど、なんだか気合いが感じられなかった。何かオリジナリティーのある表現があったわけでもなく、シナリオに関しても冗長で緩慢なものになっていたように思う。
 ナレーションがメタ視線で作品内容に突っ込みを入れるというのは目新しくも感じたけれど、あまり良い印象を持たなかった。本来ならばナレーションで説明するのではなく、物語の登場人物たちの表情や仕草によって表現されるべきところだと思う。登場人物たちがどんな心情でいて、どういうキャラ付けをされているのか、そういった内容に踏み込んでナレーションで言及することは領分を越えているとしか思えない。それらは作品の受け手が独自に解釈すべき問題であって、作品を作る側が規定してしまっては味気ないものになってしまう。そう考えると、表現のあり方に関しては『けいおん!!』と対局にある作品だったと言えるのかもしれない。つまり、行間における表現がまったく見られず、ただただ、あからさまにお約束や予定調和を垂れ流してしまった作品といった感じがする。

■HEROMAN=総得点:19点
ストーリー★★★★
キャラクター性★★★
画★★★
演出★★★
音楽★★★
総合的な評価★★★

 自己犠牲によって問題を解決するという、ある種の「ヒーロー像」を否定したことには一定の意義があったと思う。当初から「新しいヒーロー像」を目指しているといった主旨の表明があったが、最後になって「新しい」の意味が示された感じ。でも、本当に新しいのかなぁ…wそもそも「ヒーロー」という誰しもが共有できる偶像を想定している時点で古いような気もする。今となっては「国民的」とか「みんなの」っていう冠辞が古びたニュアンスで感じられる中、そういった大枠で大衆を捉えようとする動きそのものが古臭いように思う。しかも、最終的に導いた結論が自己犠牲の否定とあっては、なかなか納得しようもない。

「カッコつけて、妙なヒロイズムに酔っぱらって、親父は死んじまった。笑えるよなぁ。結局、私たち家族に残されたのは、あの小汚いヘルメットだけだもんなぁ。」
#22「メモリーズ MEMORIES」より

「お願いだから、やめてっ!あなたが犠牲になっていいはずはないわ!!」
「リナ、どうして…。」
「お前がロクでもないことしようとしてっから、一発殴りに来たんだよっ!!」
「姉ちゃん、何言ってるんだよ。そうしないとみんなは、この星は終わっちゃうんだ。今、僕がやらないと、僕が…。」
「そうやってみんなを救ったとしても、ジョーイがいない世界なんて、私は嬉しくもなんともない!!」

「ジョーイ、私と最初に会った日のこと、覚えてる?ジョーイはもう忘れちゃったかもしれない。でも、私ははっきり覚えてる!ジョーイは私を守ってくれた…。」
「覚えてるよ。僕はリナを守れなかった。あの日、助けてくれたのは、姉ちゃんだ。」
「そうじゃない。私は嬉しかったの!あのとき、友達はみんな逃げちゃって、私一人取り残されて…。あなたが、ジョーイがそばにいてくれたのが、私はとても嬉しかったのよ!私はずっと、ジョーイと一緒にいたいの!!」

「なんだよ、そんな顔をしやがって。俺達は仲間だろ!?」
「ヒーロー達のピンチを救うのは、仲間の仕事ってね。」
「ヒーロー達…??」
「そうよ、ジョーイ。ヒーローは独りじゃない。独りきりじゃヒーローになんてなれない。ジョーイにはヒーローマンがいる。ヒーローマンがいて、仲間がいてこそ、ヒーローになれるのよ!?だから、あなたたちがヒーローなのよ!!」
「そうか…。そういうことだったんだ。」
#26「フェイス FAITH」より

 結局は、自分の守りたいものを守るために自ら戦いに身を投じるという考え方に結び付ける。それは、たとえば、見ず知らずの抽象的な「国民」とか「弱者」を守るためとかいう「正義」ではなく、自分の居場所やアイデンティティを守るため、あるいは自分の身知っている具体的な仲間を守るために立ち上がるといった動機に支えられている。これを「新しいヒーロー像」として提示したように受け止められた。いわゆる「みんなのために~」と言ったようなヒロイズムを否定して、個人的な動機のもとにヒーローの在り方を還元したものと言い換えることもできる。
 けれど、これって少なくとも1990年代には既に見られた発想だと思う。そもそも敵役を絶対的な悪ではなく人間として描いたのは『機動戦士ガンダム』に見られる要素だったし、そういった設定のもとには勧善懲悪といった考え方すら介入の余地がなくなってきている。他にも『機動戦艦ナデシコ』では「それぞれの正義」が提示され、至って個人的な動機のもとに戦いに身を投じる主人公が描かれた。自分の仲間を守るために戦うといった動機を登場するキャラクターに導かせる内容を持つアニメなんてのは、他にも宇宙を舞台にしたSF系のアニメではたくさん見られると思う。スタン・リーとしては「新しい」要素だと考えたのかもしれないが、日本のアニメ史上では取り立てて新しみが感じられるものではなかった。むしろ、「新しい」と宣言してしまっただけに、滑ってしまったような感がある。今の日本で新しいヒーローと言えば、たとえば『東のエデン』で示された滝沢朗や『とある科学の超電磁砲』の御坂美琴や『コードギアス 反逆のルルーシュ』のルルーシュ・ランペルージといった、社会の悪弊に対して立ち向かう姿勢をもったノブレス・オブリゲーションを理解したキャラクターを言うんじゃないだろうか。どうも『HEROMAN』は誰に向かって作品を送っているのか理解できない。
 っていうか、勧善懲悪をベースに敵役を絶対悪に位置付けている時点で、戦いの理由を個人的な動機へと導いてしまうことがミスマッチにしか思えない。明らかに勧善懲悪のシステムはヒロイズムと親和性を発揮する発想だと思う。誰が桃太郎が仲間を守るために鬼が島に行ったと考えるのだろうかw桃太郎は自分の「仲間」が実際の被害にあったわけでもなく、単に鬼が絶対悪と物語の中で位置付けられているから鬼が島に行った。必ずしも設定が一致するわけではないけれども、やはり『HEROMAN』の導いた結論には無理があるように感じられる。
 他にも『HEROMAN』の不備は多い。当初はリナの兄貴であるウィルがガキ大将的に不条理にジョーイをいじめる役だったが、途中になって「確かにウィルはムカツク野郎だ。でも、今ならわかる。あいつは人を傷つけて、平気でいられるようなやつじゃない。」とサイが評する場面が出てくる。これは明らかな矛盾と言わなければならない。ウィルは平然とジョーイのことをいじめていた。
 なんというか、アメリカ的なものと日本的なものの不協和音や不整合面があったように思う。正義とかヒーローという概念に関して、両者の理解は大きく違っている。それにも関わらず、この両者を同じものとして考えてしまった部分があったのだろうか。日本的にヒーローを描こうとしたけれども、なかなか土台となっているアメリカ的な発想に基づく物語世界から離れることができなかった、そんな苦悩があったのではないかとも察せられる。まぁ、全体的に不満だった。。

■黒執事Ⅱ=総得点:18点
ストーリー★★★★
キャラクター性★★★
画★★★
演出★★★
音楽★★
総合的な評価★★★

 最終話のラストにおけるセバスチャンの表情を見るだけでも価値がある。彼の能面のような顔にやる方のない憤りと虚脱感が表現され、それが彼とシエルの物語を総括するような形となって読み取れた。今回のシーズンの中では屈指の表現だったと思う。何より、やはりセリフに頼らずに表現される内面というのが好感を持てる第一のポイントなんだろうと思う。すべてをセリフによって説明されてしまっては、まるで説明文を読まされているようで物語性が損なわれてしまう。そういった弊害に冒されることのない作品展開を行っていた点が良かった。
 最終話にたどりつくまでの展開も面白かった。アロイスとクロードの関係性や、そこにシエルとセバスチャンも加えて、嫉妬と愛憎の交錯する中での物語というのは飽きがなかった。たまに遊び感覚で挿入されるネタもアクセントとして面白かったし、パロディー要素も忘れずに取り入れている点は最近の作品らしい特徴だったように思う。
 ただし、この作品がアニメらしいのかと言われると疑問がないわけではない。高い表現性があることは確かだったとしても、やっている内容そのものがアニメ文化の系譜をストレートに受け継いでいるものかと考えると、なかなか素直に肯けない部分がある。まるで昼メロを見ているかのような愛憎劇はアニメとしては異色の内容と言ってもいいだろうし、何か作り手側の伝えたいメッセージ性があったのかと言えば明確なものは感じられなかった。いわゆる「骨」と呼ばれるようなものが見当たらず、ただ耽美的で表現の豊かな作品というような感じだったと思う。

■会長はメイド様!=総得点:15点
ストーリー★★★
キャラクター性★★★★
画★★
演出★★
音楽★★
総合的な評価★★

 単なるキャラクター設定としての記号的なツンデレではなく、シナリオとしての物語的なツンデレを見せてくれた。ツンデレに独特なセリフ回しによってツンデレキャラを場当たり的に演出するわけではなく、正義感丸出しで一途で公正で清廉潔白なツンツンした鮎沢会長というキャラクターをしっかりと打ち立てたうえで、メイド喫茶でアルバイトをしているという弱みによって次第にデレ具合を増していく過程が順を追って描かれていた。作品の後半になればなるほど面白みが増していったように思う。ラブコメとしての要素もふんだんに盛り込みながら、ツンデレ要素を軸にしたひとつの恋愛物語として成立していたように感じた。

■祝福のカンパネラ=総得点:9点
ストーリー★
キャラクター性★★
画★★
演出★
音楽★★
総合的な評価★

 何かやっているようで、何もやっていない作品だった。っていうか、何もなさ過ぎてコメントできない…wあぁいうキャラクターたちを可愛いと思うのであれば別なのかもしれないけれど、そういったキャラクターに興味を持てない身としては無味乾燥な作品だった。いわゆるハーレム型の作品のため、相手となる女性キャラクターに十人十色の様々な容姿・性格を持たせてあるのはわかる。けれど、シナリオや世界観に何の根拠や裏付けが与えられていないため、物語そのものは浮ついてしまう。物語を描くためにキャラクターを登場させるのではなく、キャラクターを登場させるために物語を用意したような感じがする。そうなってくると、もう興味を持てない。

■みつどもえ=総得点:13点
ストーリー★★
キャラクター性★★★
画★★
演出★★
音楽★★
総合的な評価★★

 今期のギャグアニメとして安定した立ち位置を占めていた。話が進むにつれてクラスのキャラクターたちの「らしさ」が見えてきて、より一層、個々の話も面白く感じられた。多少は過激な内容ではあるが、結局は下ネタを題材にしながらも危なげない内容として収められている。小学校六年という子どもたちの奔放で活発な行動と相俟って、ギャグも上手く仕上がっていたと思う。近い作品としては『B型H系』が思い浮かぶけれど、淡々とギャグを積み重ねるだけでドラマ性がない分だけ『みつどもえ』は劣るかもしれない。好奇心旺盛な子どもが下ネタとどのように出会い、どのように扱うのかといった滑稽味が良かった。
 ただし、やはりネタに飽きることがある。よく用いられるのが勘違いネタだった。一方ではガチレンジャーの話をしているつもりなのに、それを傍から聞いている人にとっては下ネタに聞こえてしまう、といった具合の勘違いをネタにしたギャグが多い。どうしても同じパターンの中身だけを変えて再利用しているように見えてしまい、その点ではネタの乏しさが目に付いてしまった。

■生徒会役員共=総得点:6点
ストーリー
キャラクター性★
画★★
演出
音楽★★
総合的な評価★

 メディアの違いを理解できなかった生徒会の作品っていう感じ。ぶっちゃけたところ、素人が作ったような作品にしか見えなかった。まるで四コマ漫画のカット割りをそのまま流用したかのような感じで、アニメになっていなかった。四コマ漫画に色と声が付いただけと言っても差し支えがないくらいの仕上がりだった。まったくアニメの時間進行を意識していなかったようにさえ感じてしまう。なんだ、この冗長な演出は…。ただでさえ寒い下ネタを言った後で、微妙な間をあけることには耐えられなかった。テンポ感がなく、無駄に時間をかけている表現が嫌に目立った。ピー音を入れることで、却って隠された下ネタを想像する面白みがあったことが、せめてもの救いだったと思う。メディアの違いを理解した上でアニメらしく演出するのではなく、あくまで原作に依拠した表現を押し通すと言うのであれば、そもそもアニメ化する必要性はない。

■あそびにいくヨ!=総得点:19点
ストーリー★★★
キャラクター性★★★
画★★★
演出★★★★
音楽★★★
総合的な評価★★★

 序盤二話の演出が非常に冴えていたものの、その勢いが続かなかったのが惜しい。ドタバタ感たっぷりのラブコメという王道的な内容だったし、作品の世界観もSFテイストで宇宙でパロディーでと盛りだくさんな感じがした。ヒロインが空から降ってきて物語が始まるという典型的なモチーフの類型を採用し、各所に先行のSF作品を彷彿とさせる表現を織り交ぜ、これも典型的な恋愛の三角関係ならぬ四角関係を基軸とし、巨乳やネコミミや幼馴染や貧乳やメガネやミリタリーといった記号的な要素も多く散りばめ、かなり欲張りな内容になっていたと思う。そういった内容を上手くひとつの舞台にまとめ上げた点は面白かったけれど、如何せんオリジナリティーは感じられなかった。序盤の勢いが続いていたならば良かったけれど、後半になって間延びしてしまったため、内容の薄さが出てしまっていた部分もある。もっと内容を詰め込んでいれば、さらに良かった。1クール作品だったために尺の関係で犠牲となった設定も多かったように感じられた。とは言いながらも、この手の作品をいろいろと見聞きしてきた身としては、かなりテンションの上がる作品だったことは間違いないと思う。何でもありにできてしまうSF設定を持ち、ドタバタなラブコメである以上、スピード感を失ってしまったことは致命的だった。

■GIANT KILLING=総得点:13点
ストーリー★★
キャラクター性★★★
画★★
演出★★
音楽★★
総合的な評価★★

 登場人物の内面描写を丁寧にやろうとした分だけ、試合の描写がもたもたしてしまった。もっと割り切って試合前後の葛藤なり人間ドラマといった描写に注力して、試合の場面を削っても良かったように思う。試合となるとカメラが寄ってキャラクターのバストショットばかりが映ってしまい、なかなかスピード感が出ない。そりゃぁアニメでサッカー全体の動きを丁寧にやるのが難しいのはわかるんだけど、やっぱりどうしても引き画が欲しい。いくら内面を描くためとは言え、あれじゃぁ具合が悪いと思う。
 この作品ではサッカーの試合そのものを描くスポーツものというよりも、サッカーを通して描き出される人間ドラマに焦点を当てていたように感じる。しかしながら、その人間模様を描くにしても、少なからず説明的になってしまい冗長に感じた。どうしても試合の場面では登場人物のモノローグによって内面が語られてしまうため、セリフで懇切丁寧にキャラクターの内面を説明するような体裁になってしまう。そうなると、キャラクター同士の関わり合いから心情の変化が導かれているというよりも、単に変化後の心情を前提として、それを導くためのセリフが恣意的に展開されているように感じられてしまい物語性に欠ける。もっとキャラクター同士の生の声によって物語が展開されるようなアクティブな会話が欲しかった。モノローグをベタにつないでしまっては具合が悪い。



3、ベスト賞について

■ベストキャラクター賞:該当なし

 どうしても紋切り型ちっくな記号的なキャラクターの氾濫を感じてしまう。いくら容姿や名前が変わったところで、基本的な行動パターンやセリフ回しやリアクションが類型的であっては、何も特徴や変化を感じることができない。そういった表層的な部分でのキャラクター性しか汲み取ることができず、本当に「このキャラクターでなければならない」と言えるほどの個性を感じるキャラクターは見当たらなかった。
 とは言っても、やはり『けいおん!!』のキャラクターは秀逸だったと思う。特に中野梓は物語の役目と合わせて、ずいぶんと味のあるキャラクターになっていたように思う。ツインテールで妹キャラでという記号を背負ってはいたものの、怠惰な先輩たちを叱咤しながら自分自身を律することができないという矛盾した性格を持っていたところが良かった。彼女というキャラクターがいたおかげで、ただひたすらに練習に打ち込むだけでなく、お互いに楽しみながら部活をするといった大切な部分が浮かび上がったように思う。真面目だからこそ先輩たちの将来を心配していたし、卒業に際しても正直な気持ちを打ち明けることができずにいた。そんなキャラクターだったからこそ物語が豊かになった部分もあったと思う。個人的には紬が一番好きだけれども、キャラクターとしては中野梓の立ち回りが抜群だった。
 他にも神代マヤ・ジョーイ・鮎沢美咲といったキャラクターも気になるところだったけれど、どれも及ばない部分があるように感じた。どれも印象に残るキャラクターだったとは言え、どうしても記号性を払拭するほどの特徴を見出すことができない。ある意味において、『会長はメイド様!』の鮎沢美咲は『らき☆すた』の柊かがみと入れ替えたところで大きな違和感はない。そりゃぁデザインが大きく異なるから見た目の違和感はあるだろうけれども、ツンデレ属性であれば誰でも良かった嫌いはある。『HEROMAN』のジョーイ・ジョーンズにしても優柔不断な男の娘であれば良かったし、『世紀末オカルト学院』の神代マヤにしてもニーソックスにミニのワンピースによって作り出される絶対領域を持つツンデレであれば良かった。その点、中野梓は代えのきくキャラクターと考えるには無理のある部分が多い。
 結局、中野梓を挙げようとは思ったけれど、彼女の場合もようやく記号性と拮抗できるほどの独自性を勝ち得ていたまでのことで、敢えて特筆すべきキャラクターでもないように感じた。ということで、今回のベストキャラクターは該当なしということで結論付けた。

■ベストOP賞:『けいおん!!』(「GO!GO!MANIAC」第01話~第13話)

 あのグルグル回るカメラワークには素直に驚いた。OPであそこまでやるのかよっていう感じ。いや、OPだからこそなのかもしれないけれど…。音楽の奇抜さも特徴的だったけれど、あの自主PV風の映像も彼女たちらしさが感じられて良かったと思う。たくさんのMADが作られたことも人気のあることの証だった。他にも『あそびにいくヨ!』が良かったけれど、『けいおん!!』には及ばなかったかなっていう具合だった。

■ベストED賞:『けいおん!!』(「NO,Thank You!」第14話~第26話)

 このEDの仕掛けはすごかった。まだまだEDの切り替わった14話ぐらいでは元気な本編に比べてシンミリとして違和感があったけれど、それが最終話に近付くにつれて本編の内容に近付いて行った感じがする。相変わらずEDは彼女たちの演奏をプロのPV風にやった体だったけれど、そういった物語本編との連動といった意味での仕掛けが感じられて良かった。卒業式の後にこのEDを聞くと、どうしてもセンチメンタルな気分が高められてしまった。

■ベスト声優賞・男性:水島大宙(『世紀末オカルト学院』内田文明役、『GIANT KILLING』椿大介役)

 まさに「腑抜けた声」っていう感じだったwまさか『宇宙のステルヴィア』で音山光太をやっていた水島さんが、いつの間にか頼りない男性キャラクターへと…。そのあまりの落差に驚いてしまった。。感覚としては『瀬戸の花嫁』の満潮永澄と『宇宙のステルヴィア』の音山光太を足して二で割って、それを大人にしたような感じ。こんなキャラクターもできるとは想像がつくけれども、あの腑抜けっぷりはすごかったw

■ベスト声優賞・女性:藤村歩(『会長はメイド様!』鮎沢美咲役)

 先の『聖剣の刀鍛冶』では主人公のセシリー・キャンベル役をやっていたけれど、そのときは特に印象に残るような感じはしなかった。けれど、今回の鮎沢美咲役をやるに至って、ずいぶん表情が出てきたように思う。セシリーの場合はキャラクターがそうだったということもあってか、どうも一辺倒な口調というか、元のセリフも浮付いていたし、その演技も必然的なのかどうか薄っぺらな感じがしていた。けれど、今回の鮎沢美咲の場合には見事に強気な部分を演出し、そのうえでデレた部分の表情がコントラストとして浮き彫りになる形で表現されていて良かった。あんまり声でデレを出さなかったところが、より一層、デレ具合を引き立たせていたように思う。

4、総評

 2009年は小粒な作品ばかりでビッグタイトルがなかったように感じたけれど、2010年は手堅く良質な作品がぽろぽろと出てきているように思う。先ごろのシーズンで言うならば『とある科学の超電磁砲』や『四畳半神話大系』があり、それと並ぶものとして今回は『けいおん!!』の名前を挙げることができる。どれもビッグタイトルと言えるほどの存在感はなかったが、それでも表現性の高い作品として安定した仕上がりだったように感じた。2009年は類似作品の氾濫によるアニメ業界の飽和状態を如実に感じていたが、今年は少し風向きが変わってきているのかもしれない。作品のクオリティーを上げることがひとつの命題として捉えられてきているようにも感じるし、他の作品との差異を打ち出すために、ある要素において特化させた作品が目立ってきている。
 とりわけ『けいおん!!』は丁寧で緻密な画面構成が印象的で、従来の記号的なキャラクターを中心に据えたアニメから脱却した内容を見て取ることができた。従来の作品群が記号的な部分を前面に押し出して視聴者のニーズに応えようとしたのに対して、その表現性の高さを目指した内容は新しい段階への一歩と考えてもいいように思う。順当な成熟の方向性だと思う。そういったコンセプトの作品が視聴者に広く受け入れられたことは嬉しい。まぁ、単純にキャラクターへの萌えにつられた部分が大きいとは思うけど、そういった要素に加える形でクオリティーの高い内容を示したことに真骨頂があるんだろうか。先の『とある科学の超電磁砲』も少女たちの悩みや社会に対する問題提起を上手く扱ったアニメらしい作品として存在感を示していたし、『四畳半神話大系』も湯浅監督らしい映像表現とともに如何にもアニメらしい日常回帰型アニメとして印象に残っている。アニメがどんどん新しい方向へと歩を進めていることが感じられて、なかなか面白い。
 その一方で、それ以外の作品の様相を見ても何か去年と違う雰囲気を感じる。確かに『オオカミさんと七人の仲間たち』とか『祝福のカンパネラ』とか『ストライクウィッチーズⅡ』とか『みつどもえ』とか『生徒会役員共』のような変わり映えのしない作品も見受けられるけど、他の作品はどれも何か特徴のある内容を目指した「特化型」のアニメが多かった感がある。たとえば『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』であればエログロに特化した内容だったし、『世紀末オカルト学院』はベタベタなラブコメを風変わりな舞台でやったような感じだったし、『HEROMAN』はヒーローアニメとしてのフロンティアを進もうとした作品だったし、『あそびにいくヨ!』はベタベタで王道なラブコメをパロディーをふんだんに盛り込んでやった作品だったし、『GIANT KILLING』はスポーツを題材としながら人間ドラマにスポットを当てた作品だったし、『RAINBOW-二舎六房の七人-』は際立って実験的な作品だった。言ってしまえば、どの作品も特化した要素を除けば特筆すべきような内容を持たない。あるひとつの要素を特化させることによって、他作品との差異化を図り、その要素に限定的ながらクオリティーの高さを誇ることによって作品の意義を保とうということなんだろうか。
 残念ながらオリジナルアニメーションの勢いは依然として低調なままとなっている。先に挙げた三つの作品も原作付きであり、それを如何にアニメとしての手法を用いてアニメらしい作品に組み替えるのかといった部分で成功した作品とも言える。特化型のアニメにしても、ある意味においては「従来のアニメらしくない」ことを特徴にしているような部分もあり、せいぜいパロディーを取り入れることによって関連性を維持しているような状況だ。
 アニメの本分なんてものは実体のない幻想だということはわかっているけれども、どうにもアニメらしさが失われつつあるように思えてならない。それが新しい段階への着実な一歩であるならば問題はないのだけれど、今回のシーズンのタイトルを眺めているとなかなか信じ難い。かつてのアニメはもっと反社会性とか非社会性といった言葉で括られるような「骨」があったように思う。アニメもビジネスの一形態として融通のきかない部分があるとは言え、最近の作品はそういった「骨」にあたる部分が見失われているように感じる。実写や小説や演劇といった類似の分野が多い中で、アニメ独自の方向性を打ち出していかない限り、今の状況を打破できないように感じる。アニメが実写でやっていることを真似しても仕方ないし、小説から内容を拝借してきてもアニメの存在意義にはつながらないし、舞台演劇に比べれば確実に個々の表現方法は限定的になる。そのような中で、かつてのアニメが醸成してきた文化的共有基盤を見失ってしまうことは多大な損失を蒙ることになると思うんだけど…。特化型アニメが出てくる潮流っていうのは、どうにも先細りになる将来しか予感させない。



ちなみに、今までの企画にも寄稿していますので、それぞれ下記のリンクからどうぞ。

「今期終了アニメ(3月終了作品)の評価をしてみないかい?9」への投稿。
「今期終了アニメ(3月終了作品)の評価をしてみないかい?8」への投稿。
「今期終了アニメ(12月終了作品)の評価をしてみないかい?7」への投稿。
「今期終了アニメ(9月終了作品)の評価をしてみないかい?6」への投稿。

テーマ:見たアニメの感想 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2010/10/03(日) 01:59:39|
  2. アニメ四季報
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コメント

こんにちは、ピッコロでございます。

このたびはお忙しい中、当ブログの企画に参加して頂いて本当に感謝しております。集計に加えさせていただきました。


なお、今回の企画の中間集計結果の発表については、本日11月05日(金)夜11時から放送ののネットラジオで行う予定でございますので聞いて頂けるとうれしいです。

それでは、これからもどうかよろしくお願いいたします。失礼いたします。
  1. 2010/11/05(金) 21:11:23 |
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