土星蜥蜴の「筆のすさび」

日々雑感。 アニメ文化に関する気ままな評論・感想を書き連ねます。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

『紙ひこうき(原題:Paperman)』の感想。

セリフはひとつもありませんでした(^_^;)

以下、ネタバレが多分に含まれますので、ご了承の上でお進みください。




 ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの製作による短編アニメーションが公開されました。現在、Youtubeの公式チャンネルにて公開されているようです。3Dアニメーションに2Dの要素を入れ込む、ちょっとした技術革新があったのかな?あんまり話題になっていないようですが…。中身は相変わらずのハートフルなディズニーアニメっていう感じなので、今回は技術的な面に焦点を当てました。

■3Dモデルに手描きの柔軟性を取り入れる

 何が新しいかと簡単に言えば、3Dで勝手に手描き原画の中割りを作成してくれる技術なのだろうか。3Dモデルでアニメーションをつけ、そのキーフレームに手描きの原画をのせると、あとはコンピューター上で3Dモデルの動きに合わせて手描きの絵も動かしてくれるのかな?つまり、手描きの質感を動く3Dモデルに貼り付けることができるようになったということか。どうにも英語の解釈に手間取ることもあって、この理解で正しいのか不安が…w
 これを従来の技術でやるならば、3Dモデルを組んで、それにアニメーションをつけ、全てのフレームに対して手描きによる作画作業(いわゆる「手付け」の作画版)を行い、それを全てのフレームに貼り込み、ようやく完成となる。その労力は計り知れないし、無理でしょ。フルコマの作画作業はディズニーにとって旧来の方法であるため無理がないにしても、それを3Dモデルにすべて「貼り付ける」としたら気が遠のいてしまう。今回はキーフレームのみ作業すれば、あとはコンピューター上で動かしてくれるようなので、無理なく手描きの風合いを3Dモデルに反映させることができる。
 今までだって、結局のところ、3Dモデルを組んで、アニメーション付けて、それで完成ではなかった。おそらく。。カットごとに手作業でモデルの微妙な修正やライティングの調整は行われていたはず。しかし、それは3Dのオペレーターがやることであって、そこに手描きアニメーターの要素を直接的に入り込ませることは難しかった。モデルを一度組んでしまっているんだから、それをカットごとに修正するなんて作業は本来的にはナンセンスでもある。だって、3Dモデルの一番のメリットはモデルさえ組んでしまえば、後は動かすだけっていう点にあったんだもん。でも、やっぱり現実的には修正が必要になってくる。手描きの柔軟性を3Dに取り入れられるようになった点が、今回の技術の意味なんだろうか。
 一番わかりやすい例は3Dモデルに「キズ」を付けたいときかな。初期モデルは「キズ」の付いていないものを組むはずであり、「キズ」は特殊な一部のカットでのみ付くイレギュラーとなる。しかも、「キズ」は形状が不規則なために3Dは苦手なはず。今回の技術があれば、それもなんのその、手書きで作画素材を貼り付けちゃえば、それが動いてもモーフィングの如くモデルに合わせて動くので、難なくキズを付けられてしまうんだと思う。たぶん、今までのディズニーアニメに「キズ」は出てこなかったんじゃないかな?そもそも血とかケガはご法度なのかw
 つまり、モデルは一度組んだらそれを使いまわす、ではなく、あくまでモデルは基本構造であって、細かい表情変化や形状変化を手書きで補完するっていうことだろうか。確かに、今回の作品を見てみれば、今までの作品に比べて格段に表情が豊かになったことがわかる。
 そうなると、最初から作画でやればいいんじゃない?ってなる。けど、むこうのアニメは日本と違って省略や見立てや嘘パースや外連味は敬遠されがちになる。だからこそ、忠実かつ正確な3Dを使うわけであって、その発想からすれば、3Dをベースにして手描きの風合いで作品を補完することこそベストになるんだろうと思う。

■日本のアニメへの影響

 要は、今回の技術はフルアニメーション向けのものであって、日本のリミテッドアニメーションには基本的に向かないと思う。そもそもの技術や文化の基盤が異なる。まぁ、使いようによっては…だろうけど。
 フルアニメーションはもともと3Dとの親和性が高い。どちらもフルフレームの概念に則った手法だ。3D上でモデルさえ組んでしまえば、あとはフルフレームのアニメーション(=動き)をつける作業が主となる。そこでは、いわゆる「キャラ似せ」とも言うべきデザインの均質化作業は大きな問題とならない。したがって、アニメーターはまさしく動きを見ればよく、煩わしいデザインの統一に気を割く必要はなくなる。手描きから3Dへと技術移転した最大の利点は、このデザインの均質化なんじゃないかな。フルフレームを作画していた彼らにとって、3Dの技術は作業の効率化をもたらしたと思う。
 ただし、完璧なモデルを組んで同じデザインをフルフレームに摘要できたとしても、カット単位やフレーム単位での影の付け方や細やかな動きに対する配慮は人の手によって修正されなければならない。今回の技術の意味合いも、そのあたりがキモ。つまり、従来はフルフレームに亘って細やかな修正を施していたが、今回の技術によってキーフレームに対する作業のみで目的を果たすことができる。フルアニメーションの3D技術が新しい段階に進んだと言ってもいい。
 さて、リミテッドアニメーションが主流である日本のアニメ業界にとってはどうなのか。そもそも、フルアニメーションとは理念を異にする以上、3Dはメインツールになりえない。一秒間に十二コマも絵が動けば多いくらいのリミテッドアニメーションにとって、フルフレームを前提とした技術は規格違いとも言える。現在のテレビアニメーションにおける3Dの使用にあたっても、わざわざフルフレームで作成したものからコマを落としているほどだ。また、3Dは嘘パースに対応できない。もとより、フルアニメーションとリミテッドアニメーションはずいぶん昔から別々の道を進んでいる。

 何か活用法はあるのかな。。
 表情変化と言っても、日本のアニメは手描きでさえ表情変化に期待しない部分があるくらい。声優の芝居や効果音やマンプなどで心情を表現するか、もしくは、絵コンテの段階で演出技法により表現するか、あるいは、表現せずに逃げるwまぁ、その点は「能楽」における「能面」の関係から、表情変化のなさを擁護することもできるだろうけど…。
 キズを付けられる点では意味があるかもしれない。たとえば、メカがダメージを負う場合。現状では3Dでメカのモデルを組んで動かしているけど、キズが付いた場合には当該カットだけ手描きに切り替えて対応していることがほとんど。絵コンテの段階から配慮が必要になってくるし、3Dと手書きの間でデザインの調整をかけなければならないから面倒も多い。けど、今回の技術があれば…。3Dモデルを組んで、ダメージを付けたい場合には手描き素材を貼り付ければ、万事解決!になるのか?
 なんにしても、メインツールじゃないからなんとも…。





 今回の作品は新しい技術のお試しだったのかな。普通に良質でハートフルな内容だったけど、改めて日本のアニメとは根本が違うんだと思い知らされるものだった。

テーマ:見たアニメの感想 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2013/03/13(水) 17:41:05|
  2. 紙ひこうき
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

コメント

<%template_post\comment>


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://lizardofsuturn.blog40.fc2.com/tb.php/358-7ceaee8b
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。