土星蜥蜴の「筆のすさび」

日々雑感。 アニメ文化に関する気ままな評論・感想を書き連ねます。

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『少女革命ウテナ』全39話の感想。

「あれからまだいくらも過ぎていないのに、みんな彼女のことはすっかり忘れているようだね。やはり、彼女には革命は起こせなかった。消えてしまった彼女は、この世界ではただの落ちこぼれだったんだ。薔薇の刻印の掟は一からやり直しだ。よろしく頼むよ、アンシー。」
「あなたには、何が起こったかもわからないんですね。」
「え?」
「もういいんです。あなたは、この居心地のいい柩の中で、いつまでも王子様ごっこしていてください。でも、私は行かなきゃ。」
「行く?どこへ?」
「あの人は消えてなんかいない。あなたの世界からいなくなっただけ。」
「何を言ってるんだ!?ちょ、ちょっと待て!!アンシー!アンシー!!」
「さよなら。」
『少女革命ウテナ』#39「いつか一緒に輝いて」より

以下、ネタバレが多分に含まれますので、ご了承の上でお進みください。




 ようやく、今さら、やっと見ました。ずっと見なきゃいけないとは思っていたものの…。超良かった!ウテナ様は気高くカッコよく自分らしく凛々しく…。まさしく卵の殻を破った人の象徴でありカリスマだった。演出も作画も何かエネルギーがみなぎっていて良かった。とは言え、時代を感じないわけではない。あくまでウテナ像は理想であって万人が到達できるものではなく、それを高らかに掲揚するあたり1990年代を感じさせる。

■Papasとしてのウテナ

「卵の殻を破らねば、雛鳥は生まれずに死んでいく。我らが雛だ。卵は世界だ。世界の殻を破らねば、我らは生まれずに死んでいく。世界の殻を破壊せよ。世界を革命するために。」

 この作品をなんとも味気なく紐解いてみれば、要は自我の獲得を描いたものだった。それは作品全体に一貫したものであって、どんな抽象的で記号的な表現も根本はここにある。「世界を革命する力」とは既存の価値体系を破壊して自立しようとする力のことであり、「王子様」とはその体現者であり、「ディオスの力」とは自我を貫き通そうとする意志の力のことであり、「世界の殻」とは既存の安定した閉鎖的かつ無自己的な空間を指す。ウテナが女の子でありながら男装しているのも、男女という既存の価値体系を逸脱した存在であることの象徴となる。暁生によって女性らしさを与えられつつも、最終的には自分らしさを突き通して王子様になることを選択する。それは「大人になる」ということでもあるだろうし、それ以上に、自己を確立する行為でもある。ウテナは用意された運命に抗って、自ら道を切り拓いた。
 制作集団の名前が「Be-Papas」であることも、「大人になれ!」というメッセージ性を裏付けるものと言えるだろう。「Papas」の訳が難しいけど、「父性を身につけろ!」とか「英雄になれ!」とかもありかな。まぁ、作品内容と照らし合わせて、大人ってのが穏当なところか。

■ウテナとアンシーの二項対立

 ウテナこそ、まさしく「Papas」そのものだったのだと思う。ウテナは終始一貫して王子様であろうとしており、実際に王子様だったし、徹底して自我を確立した大成者として描かれていた。
 その一方で、薔薇の花嫁たるアンシーはエンゲージした相手の期待に沿って自らのありようを変える人物として描かれた。デュエルの勝者の思うがままであり、そこにアンシーの自我や意志はほとんど存在しない。用意された枠組みに捉われ、それを全うすることこそ使命だとされる。アンシーの兄である暁生は既存の価値体系を維持する者であり、自我の確立を諦めて、閉鎖的な「居心地の良い柩」を守る側だった。

「今度は私が行くから、どこにいても必ず見つけるから…。待っててね、ウテナ。」
『少女革命ウテナ』#39「一緒に輝いて」より

 物語はアンシーが鳳学園から出ることで帰結する。これは「居心地の良い柩=生きながら死んでいられる閉じた世界=鳳学園」からの脱出であり、導き手であるウテナに対するアンシーの答えだった。ここで初めて、アンシーは暁生の意志に背き、自らの意志により学園の外に出る。それまでデュエリストに従属するしかなかったアンシーが、自我を獲得した瞬間でもある。今度はアンシーも王子様となって、外の世界に飛び出したウテナを追いかける。
 それにしても、主人公のウテナはあまり変化がなく、ヒロインであるアンシーが変化した。だいたいの場合は主人公の心情を追いかけて、その変化を描くものだろうけど…。最終回のオチがアンシーになっていて、少しびっくりした。アンシーだったのか!みたいな。

■セカイ系の文脈

 作中で世界という言葉がたくさん出てるから、なんとも「セカイ系」とのつながりを考えてしまう。いわゆる「セカイ系」の定義に明確なものはないし、なんとなく一連の関係する作品群があるとされるだけでしかない。代表的なものとしては『新世紀エヴァンゲリオン』『ぼくらの』『最終兵器彼女』『交響詩篇エウレカセブン』『魔法少女まどか☆マギカ』などなど、広く意味を取れば多くの作品が含まれる。
 その要件とは、何も主人公の言行が世界の命運に直結することにあるのではないと思う。むしろ、没個性な主人公が世界の命運に差し迫られることで主体性を獲得することによって、個々別々それぞれのセカイを認知することにあると考えたほうが穏当だろう。世界に対して自らどのように関わるのかという主体的な姿勢を見出すことが肝要である。つまり、自我の獲得である。
 碇シンジは脇役だった。特に動機づけや主体性などない。しかし、周囲の人間から世界の命運を託され、なぜ自分がやらなければならないのかと自問しながら戦う。その答えが見つかったことにより、碇シンジは「おめでとう」と祝福を受けることになった。主体的な動機付けを獲得することによって、初めてセカイが眼前に立ち上がってくる。
 このように「セカイ系」を理解するならば、この作品もその文脈を継ぐものとして考えていいのではないだろうか。ウテナやアンシーにとって明確な世界の破滅や宇宙規模の災厄が降りかかるわけではないため、形式の面において「セカイ系」の文脈から逸れるものとも見られる。しかし、「セカイ系」の本質は世界の破滅という極限状態における主体的な意志の獲得であり、その点では本作も一連の流れを汲むものと捉えなければならない。むしろ、あそこまで執拗に自我の獲得を訴え啓発する様子は『新世紀エヴァンゲリオン』が自己啓発セミナーと揶揄された状況と符号しさえする。

■作品の背後に潜む「みんな」の影

 こんな視聴者に問題意識を投げかけるような作品は少ない。社会批判や啓発的な内容を含む作品が多いことはアニメの特色でもあるけど、ここまで徹底して表立って堂々と訴える作品はなかなか見ない。『新世紀エヴァンゲリオン』のときのような批判が来なかったのも、作品の表現方法が抽象的かつロマンチックで乙女チックだったからだろうか。
 アニメにおける自我の芽生えは言うまでもなく『機動戦士ガンダム』だろう。作中の表現で言う、「エゴ」である。それまでの作品が多く勧善懲悪を旨として、絶対悪を退治する物語であったのに対し、ガンダムは人間対人間の生々しい戦いを描きながら両者に正義のあることを認めた。後の『機動戦艦ナデシコ』で総括されたように、それは「みんなの正義」から「それぞれの正義」への転換を意味している。みんなで同じ価値観を共有することよりも、それぞれが別々の価値観を持つことに重きが置かれた。公共性よりも個性を尊重する発想であり、自我の獲得を謳ったウテナもこの系譜を継ぐだろう。
 しかし、ウテナは無意識的に同一の「papas」という価値観を共有するという発想を前提として内包している。用意された既存の価値観からの脱出を目指しているものの、自ら統一的な価値観を提起する状況に陥っている。見方によっては、自己矛盾を抱えているのだ。確かにウテナは自我を確立したカリスマとして象徴的な存在となった。あくまで一例として示されるべきウテナ像だが、それが理想像として印象を強く放ち過ぎる。ここに「大きな物語」を捨てきれないモダニズムの影がちらつく。人の数だけ「papas」を用意することは無謀だったし、万人がウテナになることはできなかった。しかしながら、やはりヒーローやカリスマは「大きな物語」の中でしか存在できず、その葛藤をウテナ像に表象されたと読み取るべきなのだろうか。
 今や単一個体による自我の確立は時代遅れの発想となっている。『攻殻機動隊S.A.C.』では「幻想的オリジナリティー」として孤による個性の確立を認めていないし、『とある科学の超電磁砲』でも『東のエデン』でも複数の孤が集まって形成される集団的な個性に言及する。ヒーロー像は『DEATH NOTE』や『コードギアス 反逆のルルーシュ』や『魔法少女まどか☆マギカ』といった社会悪に取材したダークヒーローの流れを経て、『東のエデン』や『輪廻のラグランジェ』などでは他者への奉仕によって自己存在の確立を目指す主人公像がヒーローとして描かれる。もはやウテナのような英雄は歴史の一幕に過ぎなくなっている。





 どうでもいいことではあるんだけど、髪の毛の透け処理はなんとかしてほしかった。瞳のハイライトに髪の毛がかかったときの透け処理が話数によって異なっていたし、そもそも瞳の白目はいいにしても、ハイライトの部分にまで髪の毛の色を反映させるのは良くなかったと思う。劇場版では改善されて、いい感じの透け透け感だった。ブルーレイ版では直ってたりするのかな?

テーマ:見たアニメの感想 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2013/03/13(水) 20:28:29|
  2. 少女革命ウテナ
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