土星蜥蜴の「筆のすさび」

日々雑感。 アニメ文化に関する気ままな評論・感想を書き連ねます。

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再現芸術としてのライトノベル

 そもそもライトノベルは文芸作品として不完全なジャンルと言える。それは作者が表現することを放棄しているからであり、読者が自らの読解を糧に幻想的なオリジナリティーを獲得するという、一種の共存関係の成立によって初めて完成を見る。演技の台本たるライトノベルは読者に演じられることで完成する再現芸術なのだ。




 相変わらず今期もライトノベル原作のアニメが多い。列挙すれば『僕は友達が少ない』『俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる』『GJ部』『ささみさん@がんばらない』『まおゆう魔王勇者』『さくら荘のペットな彼女』『問題児たちが異世界から来るそうですよ?』が該当する。しかも、その内容は似たり寄ったりとは言い過ぎながら、目に付く大きな差異は第一にキャラクターデザインが挙がるくらいだろう。その内容における共通点は「受け身の主人公」と「振り回す女性たち」と言え、これに関しては大同小異の範疇を抜け出ない。ここに、明らかにライトノベルというジャンルに一定の志向性が認められる。
 ライトノベルの基本形は男性主人公一人を女性複数が取り囲むものだろう。加えて、そこにパロディーの要素が入り込み、または、キャラクターの記号化が行われる。すると、作品のオリジナリティーとも言うべき内容が介在する余地はほとんどなくなり、作家は自らの表現性を放棄した状況となる。そもそも、ライトノベルの文体は会話主体のために地の文が極端に少ない。それは演劇の台本に近い性質を備え、畢竟、演じられる行為を伴わずして作品が完成することがない。なぜか、ライトノベルは再現芸術として認定されるべき資質によって構成される。
 ライトノベルにとっての演じ手は読者である。読み手は表現性を持たない会話文ばかりのライトノベルを前に、自ら妄想を抱かなければならない。手がかりとなる表現が少ないために、読解をしようにも、それは徒労に終わってしまう。通常の文芸作品を読むときに必要な筆者の意図を汲み取る読解力は頼みとならず、そこでは自分なりの想像を膨らませる力が問われる。つまり、その行為は相手を理解するための解釈とはなりえず、自己を作品に投影することで獲得される簡易なアイデンティティーを確立することに他ならない。したがって、作者の提示した物語や意図に沿いつつも、読者各人の夢想した物語や意図へと作品が変容する。二次創作が盛んな所以でもある。
 翻って、ライトノベルの作家はそのような幻想的オリジナリティーを確立する場を提供することが使命であり、言葉に揺らぎを持たせ、解釈の場を非限定的なものとして開放することが求められる。そのための定型であり、記号化である。ただし、読者によるライトノベルの演繹は無制限に行われるものではない。彼らに自由記述を行うだけの主体性はなく、それこそライトノベルの主人公と同一視されるべき資質を持つ。あくまで作品の設定する枠組みを必要としており、作り手はその選択肢を用意することが肝要となる。提示された選択肢の中から好みの内容を選ぶ行為にこそ、読み手は自らのオリジナリティーを見出す。言い換えれば、読者は作者に誘導されることを初めから望んでおり、用意された選択肢の組み合わせを自分なりに夢想する行為によって、そこに自らの幻想的なオリジナリティーを見出そうとする。
 別の見方からすると、ライトノベルとは作品世界の内側を指すものではないことがわかる。読み手が演じることによって完結されることから、むしろ作品内容の本質は読み手の側に存在する。読み手には多様なパロディーを読み解くだけの知識体系が備わっており、作品と知識体系が符号することで作品が完成を迎える。また、その符号の過程と結果は複数に亘って存在し、どれが正解ということもない。ライトノベルとは、作者によって提供される選択の余地を大きく残した舞台と、読者自身の幻想的オリジナリティーを獲得するための演じる行為によって成立する。だからこそ、ライトノベルの作品は内容や形式が類似し、それすらも読者の選択肢の一つとして立ち現れる。まさしくオリジナルの消失であり、原典を放棄した模倣者が烏合する場となる。

テーマ:見たアニメの感想 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2013/03/25(月) 21:26:19|
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