土星蜥蜴の「筆のすさび」

日々雑感。 アニメ文化に関する気ままな評論・感想を書き連ねます。

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『革命機ヴァルヴレイヴ』#09「犬と雷」の感想。

「みんなのためじゃない、俺は、俺のために戦いたいんだ!!」
『革命機ヴァルヴレイヴ』#09「犬と雷」より

以下、ネタバレが多分に含まれますので、ご了承のうえお進みください。




 これが本作のコンセプトなんだろうか。絵コンテを松尾監督が直接描いて、脚本も大河内さんが担当して、それぞれメインが陣頭指揮を取っているからには、外せない話数であっただろうという推測が立つ。主体的な動機を獲得した者にこそ、ルールを破ってでも自分のやりたいを貫く資格が与えられるということを描いたと受け止めていいのかなぁ。とりあえず、お客気分なネット経由の観戦者は否定的に描くわけだし、もはや動機を持たないハルトは空気でしかない。

■「ニンゲンヤメル」の意味

 ちょっと言い換えると、人間の枠組みから外れるということ。悪魔に魂を売るっていう表現が最も近いだろうか。人間社会のルールや禁忌を犯してでも成し遂げたい何かがあるのか、という問いに捉えても差し支えないように思う。

「みんなのためじゃない、俺は、俺のために戦いたいんだ!!」
『革命機ヴァルヴレイヴ』#09「犬と雷」より

 今回のキューマの行動によって、この解釈の妥当性が高まった。彼はエルエルフの言葉を鵜呑みにして全体のルールを順守しようとしたけど、結果的には、彼の自分のために戦うという動機付けによってヴァルヴレイヴに搭乗することになった。
 あれだけ「みんな」のことを考えていた彼がヴァルヴレイヴへの搭乗へと踏み切るには相当の覚悟が必要になるはず。自分がパイロットとして適切ではないかもしれないっていう可能性を否定しなければ、それは不可能だったろうと思う。自分が乗ることによって、他の適切な人が持ち得たかもしれないパイロットの資格を奪い取ってしまうかもしれない。でも、そんなことを考え始めたら、葛藤が終わるわけない。そんな簡単に自分を納得させることができるわけもない。そこで、そんな適切かどうかなんてルールは無視して、自分が戦いたいから戦うんだっていう個人的な動機へと結論を導いていく。そして、彼は覚悟を決めて、実際に行動した。停電のどさくさという機会は均等に与えられていたけれど、しっかりと自分の気持ちに根差した動機を抱えてヴァルヴレイヴに乗ったのは、まさしく犬塚キューマと山田ライゾウの二人だけだった。
 これは、社会そのものの規定するルールというのが、そこに所属する個々人の気持ちに根差さない限りは意味をなさないんだというメッセージとも受け取れる。それこそ、サンダーの言う「自分が入ってねぇみんななんて、クソだろぉがぁ!!」だろう。もしルールが人間の気持ちを裏切るものならば、それは当事者にしてみればルールを犯してでも目的を達成したくなる。しかし、それを実行した瞬間に、当事者は人間社会のルールからは逸脱することとなり、もう戻ることはできない。だからこそ、「ニンゲンヤメル」なんだろうと思う。
 これって、まるっきり『コードギアス 反逆のルルーシュ』の論理と同じ。あれもナナリーを否定するブリタニアという社会ルールを壊すことを目的として、主人公のルルーシュが悪魔(C.C.)と契約してギアス能力を駆使する物語だった。あっちは主人公がそうだったからいいけど、こっちは主人公は空気ですよ?w
 本作は脇役然とした登場人物たちが、次々に主体的な動機を獲得してヴァルヴレイヴに搭乗していくという物語なのかもしれない。すなわち、お客気分だった人々が次から次へと当事者になっていくと言い換えられるんじゃないだろうか。

■「みんな(公共)」から「それぞれ(個性)」への揺り戻し

「自分の手で仇を取りたい…。くだらないな。」
「待てよ、友達の仇を取りたいってのはくだらないことか!?」
「この機体は登録制になっている。一度乗せれば、他のパイロットへの変更できない。」
「それがどうした…!?」
「感情に任せてパイロットを選んで、そいつに才能がなかったらどうする?」
「あっ…。」
「才能がないやつの希望ほど、迷惑なものはない。仇を取ったら死んだ人間が生き返るのか?それより、これ以上どう被害を出さないかを考えろ。戦争とは、冷静かつ効率的に機械のように行われるべきものだ。」
『革命機ヴァルヴレイヴ』#09「犬と雷」より

「やめろ、サンダー!!それはお前が思ってるものとは違うんだ!!」
「すっこんでな。亡命野郎の言いなり野郎はよぉ。」
「ダメだ、こいつは!!」
「仇を討つんだって言ってんだろーがぁ!!」
「その気持ちはよくわかる。でも、それはエゴなんだ!みんなで生き残るためには、才能のあるやつが乗るべきなんだ!!」
「てめぇらはネットで可愛そうゴッコやってろよ。だが、俺は断る。俺が、俺の手で、ノブの仇を取らねぇと気が済まねぇんだ!!」
「もうこれ以上、犠牲を出さないためだ!!みんなで幸せになるためなんだ!!」
「みんなって、誰のことだ!?そのみんなとやらの中に、てめぇは入ってんのかよ!!?自分が入ってねぇみんななんて、クソだろぉがぁ!!」
『革命機ヴァルヴレイヴ』#09「犬と雷」より

 エルエルフが説いたのは公共性であり、山田ライゾウが説いたのは個性の話である。
 ここ最近のオリジナルアニメは「みんな」の側に極めて傾いていた。たとえば、『東のエデン』や『輪廻のラグランジェ』に出てくる「奉仕」の感覚は「みんな」を前提とするものだろうし、『TIGER&BUNNY』は旧来的な「みんなのヒーロー」だったし、『PSYCO-PASS』は「普通」でなければ社会から除外されるという「個」を否定する世界観を持っていた。そのベクトルが、本作で揺り戻されるのか。
 そもそも、これら「みんな」への志向はスーパーロボットの時代に遡る。無条件に「悪」とされる敵を倒す彼らは無条件に「正義」だった。それらの感覚は作品の受け手の大多数が、その感覚に同調することを前提としている。そこに「みんな」が存在していた。それが『機動戦士ガンダム』の「エゴ」の登場によって、「それぞれ」の時代へと遷る。実は敵にも信じるところの「正義」が存在し、戦いとはそれぞれの正義と正義がぶつかり合う場所だという設定へと変わった。その変遷が『機動戦艦ナデシコ』によって丁寧に描写された。それ以来、どのアニメをとっても「個性」をどう扱うかを描くものであり、公共など意識されることはなかった。それが、最近になって「みんな」へと傾いていた。とは言っても、昔の「みんな」とはだいぶ様相が異なるものだったけれども。少なからず、「個性」への志向は薄れていたことは間違いない。それが、本作では「個性」を取り挙げるというではないか!!
 単に高めの年齢層を狙っての設定なのかもしれない。シリーズ構成が大河内さんだからっていうことなのかもしれない。とにかく、今後どうなるかわからないけど、アニメ史として興味深い方向へと動いていることは間違いない。

■お客気分への皮肉

 アイナ追悼のための「安らかに」ボタンとか、まさしく非当事者の安直さを象徴するかのようなものだった。彼らは実際の惨状を見ていないにも関わらず、なんとなく可愛そうだとか不憫だとか思ってボタンを押すのかもしれない。そこには彼らの主体性など存在しているようで、何も存在していない。確かに、「安らかに」ボタンを押すかどうかという点において、本人の主体性が出る部分はある。しかし、それは単なる気休め程度の主体性でしかない。なんだか自分も「みんな」の一部になったかのような気分になって、なんとなく安心できる。ここらへんは『攻殻機動隊S.A.C.』で描かれた「スタンドアローンコンプレックス現象」に通じるものを感じる。もとより、この「お客気分」という単語は同作の2ndG.I.G.に登場するクゼヒデオの表現に拠ったものでもある。
 そんな当事者意識のない人々の慰みものにされるアイナを前提として描き、その上で犬塚キューマの主体性獲得の物語を展開させた。当初は彼も当事者意識を持っているほうではなかったけれど、そんな彼がルールを犯してまでヴァルヴレイヴに乗ろうとするに至った経緯は、「安らかに」ボタンの話と対になって鮮やかなコントラストとなって立ち現れる。
 ただ、もう一方で主人公の影が薄い。しかも、ハルトはショーコが生き返ったことによって直接的な戦う動機を失ってもいる。サキやキューマが自分の気持ちに根差した動機を獲得して戦いに赴いているのに対し、主人公たるハルトはお客さんのままヴァルヴレイヴに乗っているということになる。これって、今後の展開でなんとかなるんだろうか。



 ショーコが完全に瀬戸さんのキャラでしかない。もっと言えば、ショーコが『ちはやふる』の千早とか『TARI TARI』の来夏に見えてならない。無垢で外連味のないって、要は鼻につかないってこと?wまるで、それを見越したかのようなキャラクター付けに思える。それにしても、今回も『新世紀エヴァンゲリオン』のアスカの有名なセリフである「チャーンス」をサンダーに言わせたり、アイナが幻となって現れる場面が『機動戦士ガンダム』のララァと重なったり、ガンダム的な「エゴ」というキーワードが出てきたり、いろいろ遊んでいる感じがした。そもそも、ヴァルヴレイヴのための街だったとか、それは『新世紀エヴァンゲリオン』の設定そのままじゃん。

テーマ:見たアニメの感想 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2013/06/07(金) 04:54:02|
  2. 革命機 ヴァルヴレイヴ
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