土星蜥蜴の「筆のすさび」

日々雑感。 アニメ文化に関する気ままな評論・感想を書き連ねます。

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『崖の上のポニョ』の感想。

「ポニョ!ソースケ!好き!!」
『崖の上のポニョ』より。

以下、ネタバレが多分に含まれますので、ご了承の上でお進みください。


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 すっごくよかった。。なんか、日ごろ見ているアニメがどれだけ稚拙で商業主義的なものかを思い知らされたし、宮崎駿監督が別格であることがよくよくわかった。大人からの評判はあまりよくないって聞くけど、その理由もわかったかな。でも、大人だからこそ気付いて読み解かなければならない内容もあったし、子供にとってもトトロを上回るくらいの童話的で惹き付けられるアニメになっていたと思う。あ、作風としてトトロの流れだって言われるのを聞くけど、むしろ千と千尋の流れに近いと思う。ただ、昔の作品の延長上でつくった作品っていうよりも、宮崎駿監督が日々進化していて、その結晶を見たって感じ。ジブリ作品の中でも三本の指に入るくらいの傑作だと思います。

■絵

 まぁ、まずは絵からいってみましょうw畑違いの人間の直感的な感想になりますが…。。。
 なんていうか、一場面ごとに作りこみがすごくって見入っちゃう絵だった。ジブリって言えば細かい背景のことをよく言われますけど、何がいいかって言えば単に細かいだけじゃなくって、よく特徴を捉えた絵になっているってこと。見ていて懐かしさを感じたり、「あー、こんな風景あるある」って思わせるような共感を呼ぶ絵だったり、単に精密に描かれているだけじゃなくって、日常の風景をよく観察して描かれた絵になっているところがすごいのかな?
 でも、今回のポニョの絵は今までと大きく違っていたように思う。なんていうか、印象的な絵になっていたっていうか…、よくわからないけど違ってたw象徴的なのがOPかな。。どことなく葛飾北斎の『富嶽三十六景』のうちの「神奈川沖浪裏」を思わせるようなものだった。写実的な絵とは違って、人間の認識のレベルに近づいた絵になっていたと思う。その写実的な日常をよく捉えた部分と印象的な部分とのバランスが絶妙で、精密に描かれる部分と省略されている部分とが互いに影響しながら独特の世界観を作り上げていたと思う。
 まず写実的な場面。たとえば、ポニョとはじめて出会った浜は石に生えている藻や海面の光なんか細かいところまでよく描かれていた。フナムシがザザっと動くところも妙にリアルですよねwそれに、ポニョがお茶を飲むときに、肩からタオルが落ちるんですけど、これもポニョの無垢な感じが言葉を使わずに演出されていてよかった。これぞ絵による人物表現!他のアニメも見習うべし!!w他にも、パンくずが出たり、台風の風にケースケが流される場面の動きがよかったり、車のガラスにあたる台風の雨がリアルだったり、バケツに水を満杯にして横に動かしたときの水のあふれ方とかもよかった。
 一方、印象的な描かれ方になっている場面。たとえば、ポニョをバケツに入れて泳がせたときに、ポニョがソースケの顔に水をかけます。そのときの水しぶきがリアルじゃなくってアニメちっくな描き方に。それに、高潮になってソースケ・ポニョ・リサが周りの海を家から眺めているときの星の様子。妙に星がおっきく描かれていて、印象的な感じに。あと、小金井丸と交信するために無線電波を飛ばすとき、アンテナからアニメちっくな電波が目に見えて描かれますw
 こんな感じで、リアルな表現がある一方、印象的に描かれている部分もあって、現実世界とのつながりを保ちつつも虚構の世界にリンクしている感じが出ててよかった。

■雰囲気のある小道具

 それに、描かれる「モノ」もよかった。停電になったときに、充電式の電灯をリサがポニョに渡しますけど、あの道具、スグレモノでしょwちょっと欲しい。それに、チキンラーメンっぽいものも登場。相変わらず、ジブリの料理はおいしそうです。それに、あの発電機。本物もあんな感じwどれも雰囲気のあるものばっかりで、虚構の世界なんだけど嘘のない「物語のある道具」が出てきます。
 なんなのかって言えば、たとえば充電式の電灯が出るだけで、日ごろから台風や停電への対応に慣れている様子が伝わってくるわけです。この電灯が登場するだけで、ソースケが停電になっても落ち着いて対応している様子や、あの世界がどういう土地柄なのかを物語ってくれるわけです。こういう雰囲気のある道具が多く登場するっていうのもジブリらしい感じ。

■音楽

 絵が印象派っぽい感じだなぁって思ってると、音楽もそう思えちゃう。なぜかと言えば、冒頭部に流れてた曲がラヴェルの『ダフニスとクロエ』の「夜明け」に似ていたし、低音のうねりみたいな部分がドビュッシーの『海』に似ていた…、ように感じた。意識して作ってるんじゃないのかな?今回はオーケストラがいい感じに使われていて、見終わった後にコンサートを見ていたような感じになった。本当に、絵も音楽も「美しい」作品に仕上がってると思う。

■ポニョとソースケとリサとフジモト

 さてさて、次は内容の話に移ります。今回のキーワードはずばり「純粋無垢」でしょ。たぶん、監督のホンネ的なセリフがフジモトの言う「いつまでも幼く無垢であればいいものを…。」なんだと思う。本編見ていても、大人の身勝手さと子供の純粋さみたいなものが対立軸として描かれていたし、ソースケというやさしい男の子とポニョという本当の意味で「無垢」な存在の出会いこそ、この作品の核心になるんじゃないのかな?ポニョは魚だったのが人間になることによって、何も人間のことを知らない好奇心に満ち溢れた「純粋無垢」な存在として描かれていました。そういう無垢な存在にソースケという純粋な心を持った子供が人間の生活を教えることによって、異文化交流的なというか、なんの毒気のない無垢な存在同士の交流が描かれていたと思う。まぁ、人物別に見ていきましょう。
 ソースケって子供のくせして大人ですよねwませてるというか、落ち着いているというか、リサの身勝手さや子供っぽさと鮮やかな対比になっていて読みやすかったw「ポニョって言うの。ハムが好きで、魔法も使えるんだよ?」とか言って、子供らしく魔法を信じているところはそれとして、両親がケンカしてるときには「リサ、もう泣かないの…。」とか言いながらリサの頭を撫でながら慰めちゃう。。。ポニョと一緒にいるときも、お兄さんのようにやさしく接してあげながら、船長の帽子を得意げにかぶるところなんかは子供っぽい一面を感じさせるようでした。なんていうか、子供と大人がいい感じに同居しているのがソースケなのかな?っていうか、五歳にして船と信号で交信できるなんて、天才すぎるw
 そしてポニョは純粋無垢の一言に尽きるキャラクター。もともとの名前は「ブリュンヒルデ」だったようです。『ニーベルングの指輪』なんかに出てくるブリュンヒルデは神様的存在から人間的存在にされてしまうもので、それを魚から人間になったポニョに当て込んだのかな?短絡的に「ネブカドネザル」とか使う某アニメとは違いますwちゃんと名前にも由来と背景がある。そんなポニョはソースケに再開したときに、人間になった自分だとわかってもらえないんじゃないかと思って不安になるんです。そのときの表情とソースケとのやり取りの間合いがすっごくよかった。そこでの子供的な直感による相手の理解ってのも、純粋無垢な感じだった。
 そして、ソースケの母親のリサは一流のドライバーですwさっきも言ったように、夫とケンカすれば子供の前でも拗ねる感じ。ソースケに慰められることで元気を出すようなキャラクターですwでも、しっかり親らしい側面はあって、ソースケがポニョと離れてしまったときに「運命」なんだって慰めたり、ポニョが戻ってこられるようにバケツを庭先に置こうとするソースケに「ソースケがしたかったら、そうしてあげな。」なんて言ったりもします。ソースケの自主性を尊重しながら、親として教育している感じ。リサ自身が奔放な性格ですから、その反動としてソースケの落ち着いた性格っていうのもよくありそうな組み合わせなんでしょうかwそう、リサは買い物帰りに大股で歩くんです。相変わらず元気な女性が登場しています。
 最後にフジモト。ポニョの実の父親でありながら、ポニョは彼のことを「悪い魔法使い」だなんて呼んでましたwどうやら昔は人間だったようで、人間をやめた人間嫌い。魚をやめようとするポニョを押し留めようと必死です。彼だけは純粋無垢とはちょっと違ったキャラクターに仕上がってます。「個体の先天的劣等因子がDNAの感染で覚醒した。」とか、「さすがあの人の血を継ぐ子だ…。」とか、「いい仕上がりだ。海の力がDNAの螺旋の隅々にまで染み渡る。この井戸がいっぱいになったとき、再び海の時代がはじまるのだ。カンブリア期にも比肩する生命の爆発だ。」とか。難しい言葉が並びますけど、要は人間に対して恨みとまではいかなくっても嫌悪感を抱いている感じ。「劣等因子」とか「血」とか「DNA」なんて言っている時点で人間の臭みを感じますw
 キャラクターの配置から言えば、とにかくソースケとポニョの純粋無垢な出会いとやり取りを演出することに最大の狙いを置いた感じです。あんまり人間の「闇」と呼ばれるような部分は表に出さなかった。そこらへんが、トトロになぞらえられる所以なんでしょうね。料理で言えば「アク」をよぉく取って、キレイなスープに仕上げた感じ。アクも旨みのうちの一つなんだけどね…w

■大人と子供

 もう一点、キャラクターに関連して大事なのが大人と子供の対比。今回はここが強調されていたように思う。その典型的な場面が冒頭の以下の会話。

「なによっ、あのブキミ男!なぁんて、言っちゃダメよ~、ソースケ。人は見かけじゃないんだからね。」
「僕、言わないよ?」

 ここで大人の身勝手さと子供の純粋さを表現しているものと思われます。または、ソースケがリサを慰めている場面もそうだし、トキさんというクレーマーの存在も子供と大人の対比を象徴している感じ。だからこそ、子供の純粋さが際立って感じられるんだけど、一方では大人の汚さというか狡猾さみたいなところへの批判も感じられた。というより、今回の内容は純粋無垢な様子を強調すればするほど、大人社会への批判が浮き彫りになってきているように思う。なんていうか、表裏一体。
 いや、まったく何の気もなしに見ていたらこの毒気には気付かないんだろうけど、正直言って社会批判を強く感じてしまった。やっぱりフジモトの言っている「いつまでも幼く無垢であればいいものを…。」っていうのが象徴的で、大人社会への辟易とした思いや子供の純粋さへの憧れみたいなものがにじみ出ていたように思う。表向きは「トトロ」的な毒気のないまったくの純粋な内容に見えるけれども、その背景に流れている社会への嫌悪感というか苛立ちみたいなものは嫌と言うほど強く表現されていた。そう考えると、「子供向け」だなんて言ってしまう「大人」の感受性には危機感を覚えるw

■社会批判的内容と希望的世界の展開

 社会批判みたいな内容はそういった大人と子供の対比以外にも多く見受けられる。
 たとえば、その一つが海の汚さ。冒頭でもゴミを海の底から集める場面があったし、フジモトが湾内の汚泥に悪態をつく場面もあった。環境問題についてはもののけ姫やトトロの森がある意味では象徴的な存在としてよく捉えられるけど、まぁ、これも一連の流れの延長線上なのかな?
 それに、高齢者のデイケアセンターみたいな施設が出てきたことも違和感ありまくり。だって、子供の純粋さを描くときに、直接的には必要ないんだもん。これを登場させたことによって、より一層、現実社会とのリンクを強く感じさせることになる。ただし、決して高齢者の社会的待遇に対する否定的な意味合いがこめられているわけじゃなくって、むしろ微笑ましい光景として取り入れているようにも思える。基本的に宮崎作品っておばあちゃんのこと好きだもんねwある種、あのおばあちゃんたちも純粋さの表れとして描かれている感じ。ソースケとヨシエさんのやり取りがまさにそうだと思う。停電になったときも、折り紙でつくった金魚をプレゼントされて、これでおばあちゃんたちは大丈夫だから帰りなさいって言うんです。ここらへんのやり取りも、純粋さを感じさせるポイントになってると思う。
 なんていうか、絵が写実的な部分と印象的な部分を織り交ぜていたのと同様に、現実社会へのフィードバックを意識付けながら虚構の世界を展開しているように思える。というより、これだけ純粋さを前面に押し出して「闇」にあたる部分をほとんど見せないところからして、かえって社会批判的な内容が際立って見えてしまうんじゃないのかな?なんかシニカルなんだよね。。。そこらへんが千と千尋に似ている感じ。千尋でも両親が無断で食べ物を食べちゃってるところは現代社会の欲望への嫌悪感を表現しているように見えるし、そんな豚がぶひぶひ言いながら集まってるところは滑稽でもあった。そんなシニカルなところではトトロと比べるまでもないと思う。

■批判的見解

 ここまで好意的なコメントを並べましたけど、あえて批判的な見解を述べるとしましょうかw
 何かって言うと、ジュブナイル的な成長がないってこと?確かにポニョはソースケと関わることで人間としての感動や出会いを様々に重ねるけど、それは魚から人間への成長であって、子供から大人への成長じゃないんだよね。っていうか、この作品では子供が成長することを嫌って、子供のままでいて欲しいとさえ思わせるような内容を持っているから、もはやジュブナイル的な内容ではない感じ。だから、繰り返すようだけどフジモトの「いつまでも幼く無垢であればいいものを…。」にいろんな意味を読み取っちゃうんだよね。ただ、童心を描いただけ。だからこそ、純粋無垢を強調しすぎていて、かえって社会批判的な要素が強くなっているように感じちゃう。今までのジブリには見られなかったシニカルさがあって、ちょっと引いてしまった部分はある。まぁ、それだけなんだけどね(^_^;)というより、逆に言えばこれだけ巧妙に批判意識を折り込むってことが神業に思えるw

■他のジブリ作品とのつながり

 さっきも言ったように、海のゴミに見られる環境に対する問題意識はもののけ姫やトトロにも見られるし、シニカルな社会批判は千と千尋で見られたもの。それは内容的なものだけど、キャラクターでも他の作品でよく見る顔ぶれがいたwたとえば、ヨシエさんはハウル動く城で出てきたの荒地の魔女に見えるんだよねw歴代のジブリ作品に出てくるおばあちゃんの中でも、比較的新しいキャラクターなのかな?それに、リサは千と千尋に出てきたリンとか魔女の宅急便のオソノが近いんじゃないのかな?
 あと、冒頭部のプランクトンがいっぱい出てくる場面では、背景にトトロとかが描かれているんじゃないかと思って何度も見直してしまったw今のところ発見できず…。。。

■童話的・伝承的内容

 う~ん、説話的って言えばいいのかなぁ。「人面魚は津波を呼ぶ」っていうのも、ポニョを取り返すために魔法で津波を起こすってことが考えられたし、実際にはポニョ自身がソースケに会うために台風を起こして来ちゃったし。観音様の御神渡りも伝承的。こういう要素って物語を成立させるには大きな役割を果たしますよね。。「物語のある道具」と同じで、世界観に奥行きを与えるような感じ。
 人工衛星の落下にはじまる月の落下も、高潮の根拠として十分な論理を与えていたし、トンネルをくぐるとポニョが退行するっていうのも、魔法を捨てて人間になるポニョっていうのも、何か童話的というか伝承的というか説話的というか…w物語を虚構として成立させる要素として大きな役割を果たしていますよね。



 さぁて、長々とコメントしましたけど、ここまで辿り着く猛者はいるんだろうかw過去最長の感想になるんじゃないのかな?書いててさすがに疲れたw
 にしても、最初に見たときはポニョを金魚と言えるソースケに驚いたし、そんな海で捕まえたポニョを真水にさらしたときは死んじゃうじゃんって突っ込みたくなったw「突如発生した小型で猛烈な台風」って言われるだけで「ゆりえ様台風」を思い出しちゃうし、「ブリュンヒルデ」と聞けば『蒼穹のファフナー』を思い出す始末。アニメ脳には困ったものです。
 でも、この作品の上質で芸術性の高い仕上がりには感服しました。宮崎さん、ありがとう!子供っていいなぁ~。子供のままでいたいなぁ~wなんて思っちゃいけないんだろうか。。。ポニョを見ていると社会に出たくなくなりますw
 音も絵も発想もSEも脚本も内容も演出も…、すべてにこだわりを感じる作品でした。「本物」が息づいている感じがして、場面ごとに生き生きしていて飽きなかった。まだまだ作品を作り続けてほしいなぁ。ごろうちゃんにはこのままフェードアウトして欲しい…、おっと失礼w
 でも、宮崎さんがまだまだ進化してるんだなぁってところが何より一番すごいと思った。職人は最後まで職人なんですね。。。見習いたいもんだ。

テーマ:見たアニメの感想 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2009/07/20(月) 02:50:45|
  2. 崖の上のポニョ
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